コロナ禍で定着したテレワーク。なかには、いつ入るかわからない急な仕事のために、自宅待機を強いられるケースもあるという。さらには、そこに待機中の賃金が発生しないとなれば、法的に問題はないのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
息子はテレワークをしています。基本的に土日が休みなのですが、会社は土曜日も営業しているため、急な作業が発生した場合は対応するようにと言われています。そのため、万が一のことを考えて、土曜日も外出していません。それなのに、賃金がもらえるのは作業が発生したときだけなので、納得がいかない様子です。
ほぼ強制的に待機されられているのに、作業が発生しない日は賃金がもらえないというのは、法律的に問題ないのでしょうか。(神奈川県・55才・パート)
【回答】
週休2日の休日にあたる土曜日にテレワークするということは、休日労働になりますから、働かせるにはそれなりの根拠が必要です。
多くの会社同様に、息子さんの会社でも、就業規則で休日就労を命じられるようになっていると思います。また週1日の法定休日(大抵は日曜日が指定されます)の労働や労働基準法上定められた法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えた残業ができる労働者と使用者間のいわゆる36協定もあるでしょう。
つまり、労働契約上も労働基準法上も、会社は、法令の認める上限の範囲内で、息子さんに休日の就業を命じる権利を持っており、息子さんも就労自体は承認しているようです。しかし、テレワークの作業時間分しか賃金がもらえないのが疑問というわけですね。
休日でも会社からの連絡を受けて対応することを上司から指示され、すぐに従わざるを得ないとすれば、いつでもテレワークできるように自宅待機することが必要となりますから、休日といえるか疑問を感じるのはもっともです。
待っているだけで実際には作業していない時間も相当に長いと思いますが、賃金は、労働時間に対応して支払われますから、労働時間とは何かが問題になります。