“凶悪”“迷惑”と評判の悪いカラスだが、それは人間側の視点。カラスにだって、諸般の事情がある。動物行動学者の松原始さんに、知ったらちょっと好きになる……かもしれない、カラスの実態を教えてもらった。
「カラスに襲われた」という声は多いが、本当にカラスは人を襲っているのか?
「ああ見えて、カラスは臆病で、自分より体の大きい人間は怖い存在。理由なく攻撃することは滅多にありません。あるとすれば雛を守るときです」(松原さん・以下同)
確かに、カラスの攻撃による被害報告は、巣立ちの5~6月に集中している。公園などで群れをなす非繁殖期の若いカラスは守るものがないため、基本的に人を襲う必然性がないという。
「カラスが臆病である証拠に、電線に止まっている彼らを見つけたら、通り過ぎると見せかけて、その横でいきなり止まって見上げてみてください。十中八九ビクッと目をそらしますから(笑い)。カラスは相手の様子をよく見ていて、人間がよけていくと、『コイツは自分より弱い』と見抜いてしまいます。
よく『つつかれた』とも聞きますが、厳密には頭を狙って脚で蹴っているか、頭を踏み台にジャンプしたかのどちらかでしょう。意図せず巣に近づいて親鳥の逆鱗に触れたのだと思いますが、飛ぶのがヘタな雛が落下寸前に『おっとっと』と頭に止まった可能性もあります(笑い)」
大きなくちばしは武器ではなく、エサを食べるための道具に過ぎない。雑食性のカラスにとって、生ゴミはごちそう。ゴミを漁るのも、野生動物が生きるための必然的な行為だ。
「人間からしたら『そんなに散らかさなくてもいいのに』と思いますが、彼らも“食える”“食えない”を必死で分別しているのでしょう」