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知っておきたいカラスの生態「実は臆病」「鳴き声から“威嚇の段階”を判別可能」

電線に止まることに飽きたのか、逆さにぶらさがる個体もいるとか

電線に止まることに飽きたのか、逆さにぶらさがる個体もいるとか

せっかくゲットした食料を「カァ」と鳴いて落とす

 カラスは巣立って3年ほどは繁殖能力がないため、独身同士で群れを作り、ブラブラする“モラトリアム期間”があるという。

「群れの中でピッタリ寄り添っているのは結婚前のペア。仲がよくて、食べ物を『あ~ん』と口移しし合うなど、『バカップルか!?』と思うほど、いちゃつくペアも見たことがあります(笑い)。

 彼らは、郊外に縄張りを見つけたら家庭を持ち、群れから離れます。中にはペアも縄張りも作れず、群れで過ごす独り身のカラスもいるでしょうが、おそらく長くは生きられないでしょうね」

 淘汰の厳しいカラス界で結婚し、縄張りを持てる個体は、かなりの成功者らしい。松原さんは、カラスを見ていて、笑える行動に出会うことがあるという。

「ゴミ箱に入った数枚のせんべいを、往復するのは面倒だと考えたのでしょう、2枚ぴったりと重ねて一気にくわえ、上向きで飛び立ったのがいました。その技に『すごいなあ』と感心したものですが、別の場面では、どこかで『カァ』と鳴いた声に反射的に返事をしてしまい、くわえたエサをポロッと落としてしまったカラスもいました。一瞬『あっ』というふうに下を見たものの、そのまま飛んでいきました。必死で食べ物を探すわりに落としたものには執着がない、間抜けなところもあるんです(笑い)」

 また、“ひとりカラオケ”をしていることも……。

「秋頃、独立前のカラスが大人の鳴き方を覚えるため、ひとりメドレーみたいにいろいろな声を出すことがあります。それも必ず1羽で、誰にも見つからないよう路地の電線でこっそり練習しています(笑い)。『ガラガラ……』と変な声を出すので、カラス初心者でもわかると思いますよ」

 ときおり、「どうしても遊んでいるとしか思えない」という行動もあるそうで、「知れば知るほど興味深い鳥だ」と、松原さんは語る。

 そして、カラスには音声による威嚇の段階があるという。

「ゆったりと『カア、カア』と鳴いているのを通常とすると、『カアカアカアカア』と速く激しく鳴くのは威嚇のサイン。しゃがれ声で『ガラララ……』と鳴くようになったら、かなり怒っています」

“カラス語”を知っておくと、「急に襲われた!」と怯えることが減るかもしれない。

【プロフィール】
松原始さん/東京大学総合研究博物館勤務。研究テーマはカラスの生態、行動と進化。『カラスはずる賢い、ハトは頭が悪い、サメは凶暴、イルカは温厚って本当か?』(山と渓谷社)ほか著書多数。

取材・文/佐藤有栄 イラスト/はまさきはるこ

※女性セブン2022年9月1日号

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