嫌味を言ってきたパートさんたちの家庭事情を知って…
それはアケミさんが職場へのお土産を店で選んでいる時だった。社会人の娘が、「お土産を配る文化ってまだあるの? 私の職場や周りではゼロだよ。お金もかかるし、旅行のことを根掘り葉掘り聞かれても嫌だな」と言ったそうだ。その時は「若い人は感覚が違うのね」くらいに受け止め、特に気にも留めなかったそうだが……。
「娘は友人にあげるお土産を買わないどころか、沖縄旅行中、SNSにも投稿していませんでした。『プライベートをオープンにしてもいいことがない』と言っていました。その時は『そんなもんか』と思っていましたが……。今となっては、娘を見習っておくべきでした。沖縄旅行へ行ったことを言わなければ、ベテランパートさんたちから嫌味を言われることもなかった……」
アケミさんは、別のパート仲間からベテランパートたちの家庭事情を教えられ、それをきっかけに自分の行動を反省することになったという。
「私は知らなかったのですが、『○○さんのご家族には基礎疾患を持っている人がいて、コロナになってから旅行は一切行っていないんだって』や、『△△さんのご主人、コロナがきっかけで稼げなくなって転職したみたいだよ』などと教えてもらいました。たしかにそのような事情があったら、旅行帰りのお土産を配り、浮かれている私を見たら不愉快に思うかもしれません。コロナ前の旅行とは事情が違いますし、慎重になるべきだったと反省しています」
新型コロナが流行し始めてから、旅行に対する考え方が徐々に変化している印象を受ける。アケミさんのケースのように、一部の人から良く思われないこともあるようだ。また、お土産を買うことの金銭的な負担や、受け取った側がかえって気を遣うことなども、職場などでプライベート旅行のお土産を配る文化が廃れつつある理由の一つだろう。少し寂しい気もするが、公の場では旅行土産を通じて話題に花を咲かせ、楽しさを共有する文化自体、消えつつあるのかもしれない。