老後資金をできるだけ多く手元に残したいと考えるなかで、定年前後に多くの人が直面するのが住宅の問題だ。現役時代に購入した自宅の老朽化に伴うリフォームや住み替えの必要が生じ、まとまった支出を迫られるケースが少なくない。
だが、60歳を過ぎると金融機関からの借り入れは難しくなり、自宅を修繕して住むことも、売却して新たな住まいに移ることも簡単ではない。
そうした場合の選択肢となり得るのが、担保にした自宅に住みながら融資を受ける「リバースモーゲージ」だ。
住宅ジャーナリストの山下和之氏が解説する。
「一般的なローンと違い、本人(債務者)が存命中は借り入れた資金の返済は利息だけで済み、本人が亡くなった後に担保物件(自宅など)を売却して元金を返済する仕組みです」(以下「 」内のコメントは山下氏)
運営は民間の金融機関や自治体などが行なう。それぞれ細かな条件は異なるが、借り入れた資金の使途は幅広く、住宅費、生活資金、医療・介護費、レジャー資金、教育資金などに使えるものもある。
「しかし、日本ではリバースモーゲージはさほど活用されていません。まだ知名度が低く窓口が限られることや、自宅担保ローンに抵抗を持つ人が多いことなどが理由として考えられます。また、利用に際して将来、相続人となる子供が反対するケースも多いようです」
具体的にどんなデメリットがあるのか。
「そもそもリバースモーゲージには長生きするほどリスクになるデメリットがあります。限度額まで借り入れをすれば、その後の追加融資は受けられない。返済が滞れば(不動産が競売にかけられるなど)抵当権が行使されるケースも考えられます。また、不動産価格の下落により担保価値が低下して融資期間が当初より短くなったり、金利上昇により返済額が増えてしまうリスクもあります」