個人情報への意識が高まる昨今。プライバシー保護の観点から、スーパーなどの従業員が「名札」を付けるのを拒否することは可能か。弁護士の竹下正己氏が、実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
女性読者です。スーパーに勤務しています。先日、お客様とトラブルになった際、不快だったのは、相手がスマホで私のエプロンに付いている名札を撮り続けたこと。相手に名前を知られるのは嫌でしたし、個人情報保護が厳守されているいま、名札を付ける意味がわかりません。どうすれば、名札を外せますか。
【回答】
モンスター顧客とか、カスタマーハラスメント等と呼ばれる出来事が、しばしば報道されている昨今、店内での氏名表示は、気持ちが悪いかもしれません。
しかし、就業規則や、その下位規範である服務規程等に、勤務時間中の名札の着用を義務付けている例は珍しくありませんし、ましてや、名札で示される情報は、氏名と会社内部の所属程度です。
氏名以外には、自宅の住所や電話番号など、個人を特定する情報が表示されることはありません。結果的に、名札で顧客に名前を知られますが、そのことで法的に回復されなくてはならないほどの損害が生じることは考えられません。
ご質問の場合、写真を撮られています。仮に、ネットなどに名前と写真を掲示されると、知人などからは容易に特定されるので、プライバシーの侵害になります。
それでは、そうした事態を防ぐために名札拒否を要求できるかですが、名札を付けるのは、従業員が自覚と責任をもって職務に当たることが期待でき、大人数の職場では、従業員同士がコミュニケーションを取り、担当する職務を理解しあう上では有効です。また、対外的にも同様に氏名と、おそらく所属部署を表示した名札を付けることで、担当者の責任の所在が明確になり、顧客も安心します。