消費者目線に立つと、世界的な「物価高」に拍車をかけて輸入品の価格を上昇させる「円安」はマイナス材料に映るが、武者氏は「むしろ円安こそ日本人には最大の好機」だとみる。
「日本の失われた30年のリカバリー(失地回復)はすでに始まっている。『円安はマイナス』という見方しかできないと、いずれ後悔するはずです」(武者氏)
話題書『バブル再び 日経平均株価が4万円を超える日』の著者で不動産コンサルタントの長嶋修氏もこう語る。
「米欧がインフレ抑制のために金融引き締めを続けて金利を上げる一方、日本は金融緩和、ゼロ金利が当面続く見通しです。金融引き締めは資産価格には大きなマイナスとなるので、米欧の投資家には旨味がなくなる。そうすると世界中に溢れるマネーの投資先は、“日本一択”になるに違いない」
常に有利な投資先を求める投資家にとっては、金利は上がらないほうが借金をしやすく、ドルを円に換えて投資する際は円安のほうが安く済む。そもそも日本の株価や不動産価格は割安なうえに、金利も低く、かつ円安なので、世界中のマネーが流入しやすい環境だというのが長嶋氏の考えだ。
「日米欧の主要な中央銀行の資産規模はリーマンショック前の2007年の約300兆円から、2021年には2000兆円をはるかに超えるほど膨らんでいる。水が高いところから低いところに流れるように、リーマンショックやコロナ禍、ウクライナ危機を乗り越えるために刷りまくったお金が、割安かつ超低金利で円安な日本に大量に流れ込むのは自然なことです」(長嶋氏)
※週刊ポスト2022年9月16・23日号