上がらぬ賃金と物価上昇に国民が苦しむ中、岸田文雄・首相が掲げている政策が「資産所得倍増計画」。言ってみれば、貯蓄しているお金を金融市場に回してほしいという「貯蓄から投資へ」の国からのお願いだが、「たとえお金があっても投資なんかしたくない」という人は少なくないようだ。いったいどんな事情、ポリシーがあるのか、話を聞いた。
かつて高い授業料を払ったのでもうコリゴリ
一番分かりやすいのは、過去に投資で手痛い思いをした人だ。大手不動産会社で働くYさん(40代/男性)は、独身時代に高い授業料を払っている。
「私が勤める会社は、給料は悪くありませんが、労働環境は超ブラック。『稼いでも使うヒマがないんじゃ意味がない』と友人たちにグチをこぼしたところ、友人が『だったら株を買わないか?』と持ちかけてきました。その友人は金融業界で働いており、今思えばノルマがあったのかもしれません。
言われるがままに200万円ほど購入し、ロクに株価をチェックしないで放っておいたところ、気が付いたら買値の半分ぐらいまで目減りしていました。もともと買う気がなかったとはいえ、最終的に買うと決めたのは自分なので、友人への怒りはありませんでしたが、彼はやはり気まずかったようで、友人関係は途絶えました。得るものがなく失ったものばかりで、もう投資はコリゴリです」(Yさん)
バブル時代、父がゴルフ会員権で大損
Fさん(50代/女性)は、父親がゴルフ会員権で大損した話を母親から聞かされ、絶対に投資はするまいと決意した。
「我が家は3姉妹で、3人とも小学校から私立に通う恵まれた生活を送りましたが、母はいつも『お金がない』とこぼしていました。大人になって、母に『なんでいつも“お金がない”って言ってたの?』と聞くと、父はバブル時代、かなり羽振りがよかったものの、稼ぎの大半をゴルフ会員権に突っ込んでしまったとのこと。具体的な額は教えてくれませんでしたが、“都心に一戸建てが建つ額”と言っていたので、数千万円単位なのは間違いないでしょう。
バブル崩壊後にゴルフ会員権は暴落し、中には買った額の100分の1程度まで価格が下がったものもあったそうです。父はもう亡くなりましたが、母に苦労をかけたのは許せません」(Fさん)