長引くコロナ禍にウクライナ戦争が重なり、「円安」や「物価高」が危機と叫ばれているにもかかわらず、日経平均株価は大崩しない展開が続いている。昨年9月14日に3万670円という約31年ぶりの高値をつけた株価は、今年の3月8日に2万5000円を割り込む反落を経ながらも、盛り返してきた。
8月26日、アメリカの経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」では、米FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が講演。インフレ抑制のための利上げによる金融引き締め継続を表明した。
これを受けて景気減速の懸念が高まり、株価が急落。同日のNYダウは1000ドル超も下落し、日経平均も2万8000円を割り込む展開となっているが、その一方で、「日本株は弱くない」との見方から、今後の見通しについて強気な声が出ている。
日経平均はバブル真っ只中の1989年末に3万8915円の最高値をつけて以来、30年あまりにわたってそれを上回ることはなかった。だが、「このまま3万円を超え、もうすぐバブルを超える『4万円』の大波が到来する」と予測する投資のプロたちがいるのだ──。
「日本株の上昇機運はマグマのように溜まっており、噴き上がるのを待っている状態です」
そう指摘するのは、投資ストラテジストで武者リサーチ代表の武者陵司氏だ。武者氏によれば、バブル崩壊後の「失われた30年」の苦境が、逆回転を始めているという。
「日本企業が大躍進を遂げた1980年代以降、脅威に感じたアメリカは『超円高』と『貿易摩擦』による日本叩きに走り、日本企業は競争力を失った。
しかし、日本が長期低迷するなか、中国の台頭で、今度は対中戦略がアメリカの最優先課題になった。アメリカが対中戦略を進めるうえでは、“強い日本”にしておくことが地政学的にも重要です。日本企業の競争力を高めるために、まるで振り子のように『円安』に転じている。日米の金利差も背景にあるこの円安は、日本復活のためにアメリカが打った“布石”とも言えるでしょう」