1株からでも買える
資金が用意できたら、いよいよ取引開始だ。しかし、膨大なマーケット情報から取捨選択して最初の1銘柄を選ぶのは、骨が折れるし大いに迷いそうだ。そんな時には何を基準にすればよいか。
「自分が使っている商品のメーカーや、好感を持っていて業績・株価が安定している企業を選ぶのも手です。また、高配当の企業や株主優待を狙って選ぶのもいいでしょう。個人的には、比較的高配当で倒産リスクの低いメガバンクや大手ゼネコンが初心者向きだと考えます。現代の日本では、どちらも株が無価値になるリスクは極めて低い。実際に配当を得て、株投資の楽しさを味わうことが長続きの秘訣です」
銘柄選びとともに重要なのが、売買のタイミングだ。
「株注文では、人気で割高な銘柄ではなく、割安な銘柄を選ぶのが大原則です。株価が割高なのか割安なのかは、その銘柄の過去の株価、同業他社の株価との比較で判断します。インターネットで『割安株』の情報を調べて参考にするのもありでしょう。もちろん、実際に注文する前に株投資の基礎知識に関する最低限の勉強は必須です」
「一つの銘柄を一度に大量に買わない」「あらかじめ売る時のルールを決めておく」のも鉄則だ。
「例えば、ある銘柄の株主優待を目的に一度に大量買いしてしまうと、相場が大きく動いた時に損失が膨らむ可能性がある。相場観に不慣れなうちは、購入時に『この株が何割上がったら(あるいは下がったら)売る』とあらかじめ決めておくことが重要。ギャンブルと同様、欲をかくと利益を得られないばかりか、株価の急落で損をする可能性があるからです」
配当金が支払われるタイミングは企業の決算時期により異なるが、通常は本決算の年1回か、中間決算も含めた年2回、支払われるケースが多い。この配当金と、株の「譲渡益」(売却によって得た収入から購入代金と手数料などを差し引いて出た利益)には、約20%の税金がかかることも考慮しなければならない。
前述したように、株は通常は単元(100株)あたりの売買になるため、株価が数百円でも最低投資金額は数万円が必要だ。ただし、近年はそのハードルが下がってもいる。
「SBI証券やマネックス証券などのネット証券では1株、数百円から株を購入できます。500円以下で1株が買えるものはワンコイン株と呼ばれる。株主優待や配当はないが、例えばSBI証券では日本郵船や三菱商事、東京エレクトロン、トヨタ自動車など、錚々たる銘柄が選べます」
たとえ1株でも「株主」になれば経済を見る視点が変わるかもしれない。
※週刊ポスト2022年9月16・23日号