流通会社のオーナーであるAさん(74)は、長年にわたって子や孫に贈与を続けてきた。
「年間110万円までの贈与は非課税と税理士さんに言われ、かれこれ20年ほど続けています。きちんと記録を残すために、非課税枠を少しだけ超える毎年115万円を贈与し、子や孫はそれぞれが5000円の贈与税を支払っていますね。
コツコツとやっているので、自分が死んだ時にかかるはずだった相続税をかなり減らすことができていると税理士さんからは聞いています」(Aさん)
相続が発生した際、原則として故人の資産額が大きければ大きいほど税率が上がり、相続税は高くなる。
しかし、Aさんのように生きているうちに財産を子や孫に渡す「生前贈与」を行なえば、課税資産総額を減らすことができる。相続税対策の王道とも呼ばれる手法だ。
この生前贈与には2種類の方法がある。税理士法人レディング代表の木下勇人・税理士が解説する。
「ひとつは年間110万円までが非課税になる『暦年贈与(暦年課税)』です。超過分は段階的に設定された税率に応じて、贈与税の額が決まります。
もうひとつは累計2500万円までの贈与がいったん非課税になる『相続時精算課税制度』で、相続が発生した際、贈与分を相続財産に加算して相続税を計算します。ただし、こちらの制度は贈与する相手が限定されるうえに、効果的な節税が難しく使い勝手が悪いため、利用する人は少ないです」
メリットが得られやすいのは暦年贈与で、年間110万円の贈与を積み上げる場合は非課税で財産が圧縮できて、相続税を減らすことができる。