そう制度改正の実現に意欲を見せた。一方で時期については慎重な言い方をする。
「年末までに議論して翌年度の税制改正大綱を作り、来年の3月までに改正法を成立させて、来年度から施行するのが一般的ですが、この件については法律が成立しても施行がいつかは別の問題です。周知期間も必要だし、皆さんのライフスタイル設計もあるでしょうから急激にハンドルを切ることはできないと考えています」(同前)
今後の議論の進み方を注意深く見ていく必要があるだろう。
相続・贈与に詳しい山本宏税理士事務所の山本宏氏は「落ち着いて判断していくことも大切です」と語る。
「今は人生100年時代です。慌てて生前贈与をして、老後の生活費が足りなくなるケースも想定されます。お金が必要となった時に“返してくれ”とも言えないので贈与のし過ぎには注意しましょう。また、遺産の総額がどのくらいになりそうなのか、相続税がどのくらいかかることになりそうかをチェックすることも非常に重要です。そもそも遺産の総額が基礎控除を下回るなら、わざわざ贈与する必要はありません。多額の相続税が発生する見込みがないなら、新制度の中身を見極めてから対策を考える方法もあり得ます。
自分にとってどんな対策がプラスとなるのか。区役所や市民会館で開かれる贈与税や相続税の無料相談会も開催されているので、正しい方法を知った上で取り組んでいくのがよいでしょう」
国の動向を注視しつつ、自分にとって何がベストの選択か、一人ひとりが考えなくてはならない。
※週刊ポスト2022年10月7・14日号