近年、着実に改善の方向に進んでいるものの、問題解決にはまだまだ程遠いのが職場のジェンダーギャップ。コンプライアンス上はマズいのに、いまだに昭和のノリで女性に雑用を押し付ける“おじさん社員”は少なくない。そんなおじさん社員たちに囲まれながら、社内で確固たる地位を築いている女性社員たちは、旧態依然とした企業風土とどう戦ってきたのか。中には「戦わない道を選んだ」という人もいるようだ。ある女性管理職が歩んできた会社員人生からは、いまだに男社会から抜け出せない日本企業の姿が見えてくる──。
現在、某有名企業に勤務する女性・Fさん(50代)は、本人曰く「学歴も冴えず、これといったスキルも無い」にもかかわらず、大学時代はバブルの真っ只中で、就職活動は「楽勝だった」という。
「私が通っていたのは中堅私大で、しかも文学部。今なら中小企業でも採用は厳しいでしょうが、いくつもの一流企業から内定をもらい、その中から就職人気ランキングが一番高い会社を選びました。初年度の夏にいきなり50万円以上のボーナスが貰え、“こんなにもらっていいんだ”“会社員サイコー!”と思ったのを覚えています」(Fさん。以下同)
その企業は女性が働きやすいことで定評があるが、内部の人間に言わせれば、社内は昭和ノリが抜けないおじさんだらけだという。
「産休や育休については制度が整っており、その点では極めて女性に優しい会社です。産休を取ったからといって昇進に響いたり、戻ってきたらポジションがなくなっていたなんてこともありません。しかし社員の男女比は圧倒的に男性が多く、色々なシチュエーションで“女性は弱いな”と感じざるを得ないのも事実。基本的には完全に男社会です」
いくら制度的には男女平等を謳っていても、男女比が大きく偏っていれば、雰囲気はそれに左右されるということ。いまだに「○○は女性の仕事」という感覚が抜けないおじさんは少なくないという。
「おじさん連中は、頭では『女性にお茶くみやコピーなどの雑用やらせちゃいけない』ということは理解していますが、染み付いたクセは抜けないもの。だから私は、そういった場面が訪れた時には率先して雑用をこなすようにしていますし、飲み会に誘われれば必ず参加して、せっせと食事を取り分けたり、オーダーを聞いて回ったりしています。
そういう風にしていると、おじさんたちは口では『女性にそんなことばかりさせたらコンプラに引っかかっちゃうよ』『男どもももっと動け!』なんて言っていますが、自分が動く気はゼロ。結局やって欲しいんですよ」