“おじさん担当”が評価される皮肉
Fさんとて、そんな状況が望ましいとは思っていない。もともとは女子校育ちで、学校では男女同権についても学んでおり、理論武装もしっかりしている。しかし、彼女が自ら状況を変えるべく動く気はないという。
「ウチの会社の役員や管理職は大半が男性。私を評価するのはおじさんなんだから、おじさんが喜ぶように振る舞わざるを得ない。結局、上司に仕える身なのだから、上司が気分良くなるように振る舞うのも部下の義務だと割り切っています。コピーや伝票整理だって、おじさんにやらせると時間は掛かるしミスは多いしで、結局誰かがフォローすることになるので、最初っから私がやった方が早いんですよ」
こうしてFさんが“おじさん担当”として長年働き続けた結果、皮肉なことに男性社員からも女性社員からも一目置かれるようになり、気づけば出世して、いまや社内でなかなかのポジションに就いている。Fさんはこう語る。
「心の中では、女性を一段下のように見るおじさんなんてバカにしています。けれども私の価値観に照らし合わせれば、戦っても得るものは少ないし、社内の居心地も確実に悪くなる。仕事以外のことにエネルギーも割きたくない。ただ、後輩の女の子たちには『あなたたちは雑用なんてしないでいいからね』とは繰り返し言っています」
表向きは「女性が活躍できる企業」と謳っていても、中身は男社会のままという企業は少なくない。特に入社年次の古い女性社員であれば、その洗礼を強く受けてきただろう。だからこそFさんは、「男社会と戦わない」という道を選ばざるを得なかった。日本企業が真の意味で男女平等になるのは、まだ時間がかかるのかもしれない。(了)