企業の福利厚生の一環である社員食堂(以下「社食」)は、安価、かつサイドメニューなどで栄養バランスも考慮されていることで重宝している人も多い。外食するよりもコストパフォーマンスが優れているのが魅力だが、原材料価格の高騰による影響から、社食メニューを値上げする企業も増えているようだ。社食を日常的に利用する社員たちにとっては、大きなダメージとなっているようだ。
ありがたい存在に変わりはないが…
山陽地方で、メーカーの支店に勤務する40代男性・Aさんは、昼食はいつも社食で食事をとってきたが、今年9月から、多くのメニューが約50~100円値上げされた。「社内でも、動揺が広がりました」と振り返る。
「私が今働いているところは、周囲に食事をする店があまりないんです。なので、昼食時は皆で社食に行くのが当たり前で、そういう生活に慣れきっていました。安いし、社食は本当になくてはならない存在なので、値上げはかなり“痛い”ですね。
300円だったうどんやそば、カレーライスといった定番メニューは400円に。3種類ある定食も、それまではすべて500円未満だったのに、480~580円と、500円超えのものが出たのはショックでした。もちろん、外で食べれば一食800~1000円くらいはするわけですから、まだまだ安いし、ありがたい存在に変わりはありませんが……」(Aさん)
ただAさんは、「今後のことを考えると、不安です」と本音を漏らす。
「以前はそれなりにメニューが充実している社食だったのに、コロナ禍以降は在宅勤務で出社する人が減ったことや、衛生上の観点から、完全閉鎖された時期もありました。復活した後は、かなりメニュー数が減っています。以前は定食だと魚と肉が選べたのに、日によってどちらかしか選べなくなった、といった感じです。
いろいろなものが値上がりし、飲食店でも値上げのニュースが続いていたので、社食メニューが値上がりすると聞いた時、驚きはしましたが、『やっぱりな』という気持ちがあったのも事実です。でも、さらなる値上げもあるかもしれないし、値上げで済むならまだマシという思いもあります。取引先企業ではそもそも社食が廃止されたところもあるので、存続しているだけでもありがたいと思うようにしています」(Aさん)