自営業者やフリーランスが加入する国民年金の目減りを抑制するために、サラリーマンが加入する厚生年金の報酬比例部分(2階部分)の支給額を減らす「令和の年金大改悪」の議論が話題となっている。インフレ時に年金の引き上げ幅を物価上昇よりも低く抑えることで実質的に減額するマクロ経済スライドの調整期間を変更するという議論だが、それ以外にも国民年金の危機的な状況を厚生年金の保険料によって穴埋めしようとする制度変更が、次々と進められようとしている。
日経新聞が〈国民年金「5万円台」維持へ〉と9月28日付の一面で報じるなどした“穴埋め策”は、国民年金(厚生年金加入者における「基礎年金」)へのマクロ経済スライドの適用を早期に停止し、厚生年金における報酬比例部分のスライド適用を延長するというものだ。報酬比例部分の追加的な減額が先に発生することから、サラリーマン年金のカットであり、国民年金の減額を止めることの財政的な見通しも立っていないという疑念を本誌・週刊ポストでは報じている。
保険料の未納率が高い国民年金は財政が危機的な状況にあるため、政府はそれ以外にも様々なかたちで給与から保険料を“天引き”できる厚生年金の加入者を増やそうと躍起になってきた。当然ながら、加入者が増えれば将来の年金支払いは増えるが、それよりも目先の年金財政のやりくりを優先しているような格好だ。
この10月からも厚生年金の適用対象が広がった。これまで短時間労働のパートやアルバイトの場合、厚生年金に加入しなくてはならないのは従業員数が501人以上の企業となっていたが、それが101人以上の企業でも加入しなくてはならないことになった。夫(妻)が正社員であるパート妻(夫)などで新たに加入対象になるのは約45万人とされる。
「厚生年金に加入する会社員の妻(夫)が専業主婦(主夫)であれば『第3号被保険者』となり、保険料を払わなくても国民年金の加入期間としてカウントされる。政府はそうした第3号被保険者を減らすために、パートで収入があれば厚生年金に加入しなくてはならなくなるように適用拡大を進めてきました。今後はさらに第3号被保険者の縮小・廃止へと議論が進んでいくものと考えられます」(ベテラン社労士)