中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

地方移住して初めて知ったバーベキューの意義 手軽に皆が集える日常的な「おもてなし」

唐津に移住して約2年、BBQに参加する機会が圧倒的に増えた(筆者撮影)

唐津に移住して約2年、BBQに参加する機会が圧倒的に増えた(筆者撮影)

「おもてなし」のやり方にもいろいろあります。鯛の煮つけやら各種煮物、サラダなどをキチンと用意して、客人をもてなすこともあるでしょう。一方、BBQはとにかく「食材を焼けばいいだけ」という手軽さがあります。そして、庭やテラスにクーラーボックスを置き、その中に缶ビールやら缶チューハイを入れておけば来客は勝手に楽しんでくれる。

 私は東京時代、BBQを敵視する人々が匿名掲示板に大量に書き込みをしていたことについて、「そこまでBBQを嫌わなくても……」と思っていました。恐らくそうした書き込みをする人たちは、湘南の海岸で刺青だらけの人々がBBQをやっていたり、多摩川でゴミを放置したり、花火をやって大騒ぎをしている様をイメージしているのかもしれません。

 やはり、都会の人々にとってBBQは「特別」なものだったのでしょう。しかし、地方の人にとってBBQはあくまで「みんなで会う時の最もラクなおもてなし方法」なんです。別に「リア充の象徴」でもなんでもありません。ただ単にラクだからBBQをする。焼かれたものを食べるのはそれぞれのペース。冷えてしまった場合はもう一度網に置いて焼けばいいだけ。

 地方民にとってBBQは日常です。ネットでなぜ「BBQヘイト」が起こるのか、過去には若干理解できていた面もありましたが、今はもうまったく共感できません。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『よくも言ってくれたよな』(新潮新書)。

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