家族が亡くなった後に、利用していたネットサービスのIDやパスワードが分からず、困ってしまう遺族は少なくない。さらに、暗号資産(仮想通貨)を持っていた場合には、パスワードがわからないと現金化できず、相続できない場合もある。さらには、相続税の問題も──。69才・パート女性が、亡き夫が遺した暗号資産に関する実体験を明かす。
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暗号資産で莫大な財産と思いきや一転“負債”に?
半年前に亡くなった夫(享年67)の遺品整理をしていたのですが、パソコンを開くと、暗号資産「ビットコイン」で投資を行っていたことがわかりました。それも残高が2000万円! 加えて、インターネット上でFX(外国為替保証金取引)もやっており、こちらは80万円ほどのマイナス……。
私は暗号資産やFXといった投資についてさっぱりわからないのですが、FXの80万円の損失を払っても余りある財産があることを知り、夫に感謝しました。これで老後も安泰だと……。
そこで、現金化しようと思ったのですが、そのためには暗号キーやらID、パスワードやらが必要とのこと。でも、夫に教えてもらっていないし、遺品の中にメモもないのでわかりません。
税理士に相談したところ、「スマホの中に、情報が保管されているかもしれません。スマホなら、パスワード管理アプリが活用できますよ」と言われたので、夫のスマホのパスワードを解読しようとしたところ、10回間違えたところで初期化されてしまい、中に入っている情報を引き出せなくなってしまいました。
暗号キーがわからないのならそのまま放置せざるを得ないし、現金化できないなら、相続税はかからないのではないかと、インターネットで調べてみると、
《相続人が被相続人の設定したパスワードを知らない場合でも、相続人は被相続人の保有していた仮想通貨を承継することになるので、その仮想通貨は相続税の課税対象となる【*】》などという、さらに不都合な情報が……。
【※2018年3月、参議院の財政金融委員会における藤井健志国税庁次長(当時/現・内閣官房副長官補)の答弁より】
暗号キーがわからない私には、もうお手上げです。娘に相談したところ、「ママがしっかり財布を握っていないから、そんなことになるのよ。私に迷惑がかからないように何とかしてよね」と、協力してくれません。FXは証券会社に相談する予定ですが、暗号資産は、業者を介してではなく、夫個人が直接取引をしていたようで、誰に聞けばいいかもわかりません。
税理士からも、現金として存在しない“通貨”でも資産として税務署に申請しないと違法となり、放置しておけば相続税の延滞金がつくと言われたので、いまは税理士に手続きをお任せしています。