サラリーマンの厚生年金は2階建てで、国民年金に相当する「基礎年金」と「報酬比例部分」からなる。
現行制度では、大卒22歳で入社した社員が雇用延長で65歳まで43年間、あるいは70歳まで48年間厚生年金保険料を払った場合、報酬比例部分の年金額は増えるが、基礎年金額は加入40年で満額となるから増えない。その分の保険料は「払い損」になっている。
国民年金の加入期間が45年に延長されれば「払い損」はいくぶん解消されるものの、厚生年金加入が75歳へと延長されれば、長く働く人は最大10年分(65~75歳)の保険料が「払い損」になる。
「75歳まで保険料を支払うことになると、すぐに受給しても平均寿命までの期間は短い。これじゃサラリーマンは保険料支払いマシーンにさせられるだけで、まともな年金制度とは言えません」(北村氏)
政府は目先の年金財政を賄うために厚生年金の加入対象をパート・アルバイトなどにも拡大し、加入期間も延長して、できるだけ多くの国民に長く保険料を払わせようとしている。
「今後は厚生年金の適用拡大も考えられます。2016年に、従業員数501人以上の企業を対象として、正社員だけではなく、パート・アルバイトに対しても社会保険への加入を義務化する要件が制定された。それが20年の年金制度改正によって、加入範囲が順次拡大されているのです。ゆくゆくはすべての企業でパート・アルバイトを含めた従業員全員に厚生年金の加入義務が課せられることも考えられる」(北村氏)
だが、その分、将来の年金支払総額は増える。現役世代が年金を受給する頃には、次の世代が負担しなければならない年金債務が莫大になっていることなどまるで考えていない。
まさに「亡国の岸田年金改悪」である。
※週刊ポスト2022年11月4日号