駅近くのアクセスの良い場所に購入した納骨堂。終活の一環としてやった「墓じまい」で、この先家族に負担をかけることもなく身軽になった、はずだった。そんな時に「遺骨を引き取ってほしい」。家族を供養する納骨堂に突然、閉鎖すると告げられたら──。
北海道札幌市の宗教法人「白鳳寺」が運営する納骨堂「御霊堂元町」が、まさにそんなトラブルに揺れている。
2012年に札幌市東区に開業した「御霊堂元町」は、地下鉄東豊線元町駅から徒歩6分の好立地に建つ。
〈お墓や供養の新時代に穏やかな光に包まれて、故人様と向きあう心安らぐ時間 御霊堂元町が提供する新しい供養のカタチ〉
ホームページで高らかに宣伝するように、4階建ての建物に「光の彼方」「天空へ架ける虹」などと名づけられた7種のオリジナル納骨壇(30万~250万円)と、シェアスタイルの納骨壇(納骨壇冥加金20万円)を完備し、年間管理費は5000~1万2000円。「安心」と銘打った永代供養の料金は30万円だ。
だが、現実は心安らぐ供養とはほど遠かった。
今年9月、利用者のもとに「白鳳寺の名義が不動産会社に移った」との一方的な通知が届いた。10月9日から行なわれた説明会で、白鳳寺の太田司・代表はこう述べたという。
「10月24日に(建物引き渡しの)強制執行されるので、それまでに遺骨を引き取ってほしい」
利用者にとっては寝耳に水の宣告だった。さらには「返済できる財源がない」として、これまで支払ったお金も戻ってこないというのだ。
ことの経緯は「御霊堂元町」の経営が悪化するなかで、昨年11月に債権者の葬儀会社が建物を差し押さえ、今年7月の競売で札幌市の不動産会社が落札。所有者となった不動産会社は納骨堂の退去を求めているという。