北海道札幌市の宗教法人「白鳳寺」が運営する納骨堂「御霊堂元町」がトラブルに揺れている。永代供養料や年間管理費を払ってきた利用者に対して、今年9月、「白鳳寺の名義が不動産会社に移った」との一方的な通知が届いた。10月9日から行なわれた説明会では、同寺代表から経営悪化を理由に遺骨引き取りの要請と返金はできない旨の説明がなされた。
このような遺骨騒動は他人事ではない。厚生労働省によると、令和2年度時点で納骨堂は全国に1万3038施設あり、墓じまいなどによる改葬件数は約12万件にのぼる。
現役の僧侶で宗教ジャーナリストの鵜飼秀徳氏が指摘する。
「納骨堂は一般的に墓地より安価で、駅近にあることが多く便利なので、なかなか墓参りに行けない人でも維持や管理が容易です。そのため墓地の増減は横ばいですが、納骨堂はここ10年で急激に増えている。特に多いのが東京などの都市、九州北部など一部地域、そして今回の北海道のような屋外の墓参りが厳しい寒冷地です。納骨堂は供給過多になり、経営が安定しないリスクがあります。私の知る限りでも、この10年で数十の納骨堂が潰れています」(鵜飼氏)
今回の「御霊堂元町」が該当するかは別にしても、納骨堂には構造的な問題もあるという。
「納骨堂を設立できるのは行政か宗教法人のみで、民間企業が宗教法人に多額の金を払い、名義を借りて納骨堂を経営する名義貸しが横行しています。民間企業は営利目的なので、経営状況が悪くなればすぐ撤退します。結果として納骨堂を閉鎖し、ご遺骨が宙に浮いてしまうケースがあります。
さらに、安価で便利な納骨堂がお骨の捨て場になっているという側面もあります。今回の札幌の納骨堂も、何分の1かは遺骨の引き取り手が現われないということもあると思われます」(同前)