ツイッター買収の本当の目的は何か──。テスラやスペースXの創業者として知られるイーロン・マスク氏は10月27日、ツイッター社の買収手続きをすべて完了させた。総額440億ドル(6兆3800億円、1ドル=145円で計算)に及ぶ大型買収であるが、今後は非上場化し、プライベートカンパニーとして経営することになる。資産価値の最大化よりも、経営自由度の確保を重視したのであろう。買収の目的は“金儲け”ではないようだ。
買収の目的についてマスク氏は同日、次のようなコメントを発表している。
「未来の文明において、暴力に頼ることなく、幅広いレンジの信条が健全な方法でディベートされ得る場所、共通の広く開放されたデジタル空間が必要」
「ソーシャルメディアは極端な右翼と極端な左翼に分裂し、それぞれが狭い空間の中で反響現象を引き起こし、互いに憎しみを増幅させ、社会の分断を強めている。現在、非常に大きな危機が発生している」
「多くの伝統的なメディアは、執拗にクリック数ばかりを追い求める中、これらの二極化し過激化した集団に油を注いでいる。彼らはそうしたやり方こそが収益を上げる方法だと信じているようだが、そんなことをしているから、お互いが会話する機会を喪失させるのだ」
マスク氏は現在、共和党を支持しているが、米メディアの多くが支持する民主党、或いはその民主党を支える組織全体と対峙しているかのようにも見える。トランプ前大統領は現在、ツイッターから排除されているが、今後、それが変わるのかどうか。マスク氏による運営次第で、米国政治が大きく変わる可能性もありそうだ。
リストラだけでは事業はじり貧になる
“利益の追求が目的ではない”といっても、利用者を増やし、収益を拡大させていかない限り、ビジネスとして成り立たず、それではマスク氏の夢はかなわない。
直近となる4-6月期の業績をみると、売上高は1%減収、2億7000万ドルの赤字であった。売上高の92%が広告収入だが、マクロ経済環境の悪化に加え、この時点ではマスク氏が買収するかどうか不確かであったことが、広告収入の減少につながったと会社側は説明している。
ただ、1日当たりのアクティブユーザーは米国では前年同期比14.7%増の4150万人、海外(非米国)では17.0%増の1億9630万人と順調に拡大している。赤字の最大の要因はコストの急増だ。売上高の46%を占める売上原価は30%、39%を占める研究開発費は52%と、それぞれ増加している。買収によってクライアントの減少が進む可能性がある以上、まずはオペレーションや研究開発を行う従業員を減らし、コストを大幅にカットし、少しでも収益の悪化を防ぐことが先決となる。