混迷を深めるウクライナ情勢や急激な円安の影響で輸入価格が高騰し、相次ぐ「値上げ」の波が人々の生活を襲っている。スーパーなどで見られる食料品価格の値上げは、たんに家計の問題だけでなく、私たちの食生活のあり方すら変化させようとしているのかもしれない。これまで貯金のために自炊に励んできたという一人暮らしの20代男性会社員に、フリーライターの吉田みく氏が話を聞いた。
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私たちの生活に関するものが軒並み値上がりしている。帝国データバンクによると、10月の食料品値上げは6700品で今年最多だった。11月には乳製品や冷凍食品の値上げが予定されている。ソーシャルグッドマーケット「kuradashi」の運営会社が行った「物価高騰の影響によるライフスタイルの変化についての調査」によると、全国の男女4300人を超える回答者の87.2%が「物価高騰が家計に影響」と回答。老若男女を問わず、値上げに悩まされていることが窺える。
都内在住の会社員、ショウゴさん(仮名、26歳)は、物価上昇の影響で食生活のバランスが崩れて大変な思いをしたという。
「スーパーマーケットで買い物をするたび、値上げしてるな……と思うことが増えました。円安の影響などで仕方がないかもしれませんが、正直生活は苦しいです」(ショウゴさん、以下同)
ショウゴさんの月収は25万円弱。家賃5万円台の単身者向けアパートに住み、学生時代に借りた奨学金を毎月2万円ずつ返済しながら生活している。それでも、動画サイト視聴などお金のかからないことを趣味にしていることもあり、月に3万円ほどの貯金ができていたという。
しかし、物価上昇の影響で貯金することも厳しくなり始めた。そこで思いついたのが、食費を切り詰めることだった。
「貯金額を維持するには食費を削るしかないと思ったんです。元々自炊をしていましたが、値引きシールが貼られた惣菜で済ますほうが安上がりと気づいてからは、そればかりになってしまいました。今まで自炊に充てていた時間が浮いて節約もできる。一石二鳥と思っていましたが、そう上手くいきませんでした……」