岸田文雄首相の諮問機関「政府税制調査会」が、相続税増税を打ち出した。柱となっているのは、生前贈与の非課税枠の撤廃・縮小だ。「教育資金一括贈与」や「結婚・子育て資金一括贈与」は廃止の方向で検討されており、暦年贈与への課税強化も取り沙汰されている。そうした中で、我々はどのような対策を取るべきだろうか。ベストセラーのムック『週刊ポストGOLD 相続の大改正』に登場した専門家たちに、“年内に取っておきたい対策”を聞いた。
まずは、【1】「自分の財産を整理してまとめる」。
相続手続きに必須なのが、「相続財産調査」だ。『失敗しない相続対策』の著者・吉澤諭氏(吉澤相続事務所代表)の説明だ。
「相続財産調査ではプラスの財産に加え、借金などのマイナスの財産まで漏れなく調べ、適正に評価しなければなりません。漏れがあると、相続税の申告漏れでペナルティを受けるリスクなどが生じます。
身内が亡くなった後にゼロから調べる場合、漏れをなくすために専門家に協力を依頼することになるが、“士業”はそれぞれ業務範囲が異なります。司法書士に不動産や戸籍の調査と相続登記を依頼し、相続税の申告を税理士に依頼するといった具合に、出費が重なっていく。争いが起きそうなら弁護士も必要。費用は数十万円かかる場合もあり、状況によってはさらに高くなります」
だからこそ、自身で財産の中身をまとめておくことが大切だ。
「自分で財産目録を作っておけば、相続人が専門家に依頼する出費がなくなる。私はよく“エンディングノートにまとめて書いておきましょう”とアドバイスします。銀行や証券会社なら支店名、口座種別、取引番号や口座番号、電話番号や住所、担当者名等を書く。
不動産であれば所在と面積、地番や家屋番号。忘れがちなのは貸金庫ですね。ローンなどの借金も抜けがないように書く。それがまとめられていれば、子供は手間も出費もなくスムーズに相続手続きが進められます」(吉澤氏)
次に、【2】「生前贈与をする」などの相続税対策が必要か判断する。税理士・山本宏氏が解説する。
「相続財産の総額から『基礎控除』を引いて、プラスの場合は相続税の課税対象となります。基礎控除は『3000万円+600万円×法定相続人の数』で計算する。相続人が3人の場合、財産が4800万円超なら相続税がかかるわけです」