鉄道開業150年、いまでは女性車掌や女性運転士も増えて、女性にとって鉄道はますますなじみ深いものになっている。とはいえ過去を振り返ると、高度経済成長期には、夫が外で働き、妻が家を守る家庭モデルを国が推奨したため、鉄道は完全に「男のもの」であった。国鉄が分割民営化された1987年以降も女性の冬の時代が長く続き、1996年度末におけるJR東海の女性社員の割合は、わずか1.3%だった。
男性中心だった鉄道業界に新風が吹いたのは、1999年。男女雇用機会均等法と労働基準法が改正(施行)され、ついに女性の深夜労働の制限等が撤廃されたのだ。これを境に、鉄道業界にも優秀な女性が続々と登場する。
中でもJR東海は1997年の労基法改正を受けてすぐに女性社員の採用を本格化し、鉄道の現場で働く「プロフェッショナル職」の採用を進めた。
その黎明期から鉄道にかかわる1人が、現在新幹線鉄道事業本部人事課長を務める、柴田裕子さんだ。1997年に入社した柴田さんは新人時代、新幹線の乗務員を経験した。
「私は1期上の先輩に次いで、東海道新幹線の女性乗務員第2号でした。将来的に女性乗務員を登用するための試験的な期間でしたが、男性社員はもちろん、お客さまにもよく声をかけていただき、新人として温かく迎え入れてもらえたことを覚えています」(柴田さん・以下同)
実際に現場に立つと、多くのことが見えてきた。例えば、タイトスカートの制服では、異常時対応で新幹線の屋根の上にのぼったり、線路に下りて床下を点検する際に動きにくい。制服をパンツスタイルとしたことが、女性乗務員の活躍のための第一歩だったといえるかもしれない。