女性の多くが潜在的に鉄道好きになる要素を持っている?
乗り物そのものだけでなく、そこで働く人々とのこうした出会いも、老若男女が鉄道に魅せられる理由の1つかもしれない。渡部さんも、鉄道は移動手段でありながら、出会いの場でもあると語る。
「私自身、赤ちゃんの頃から路面電車に乗っていたからか、いまでも路面電車や、人との距離が近いローカル線が大好きです。どの駅にも働く人がいて、町が広がっている。そこでの出会いや交流は、いつまでも心に残るのです。車窓から流れる美しい風景や行く先々での人との触れ合いなど、鉄道にまつわるすべての物事が、鉄道の魅力です」
近年は、子供につきあって一緒に鉄道を見ているうちに自分も鉄道好きになる「ママ鉄」といわれる鉄道ファンも増えている。実際に鉄道で家族旅行に行くのはもちろん、家族で手軽に楽しめる趣味として、鉄道博物館や地元の沿線でのトレイン・ウオッチングをしたり、子供と一緒に鉄道模型を集めたりと、乗り物としてだけでなく、観賞するものとして、鉄道を楽しんでいるのだ。
矢野さんは、女性の多くが、潜在的に、鉄道好きになる要素を持っているのではないかと語る。
「鉄道の楽しみ方は無数にあります。時刻表を読んだり鉄道の歴史を調べたりして知識を探求する、いわゆる“マニアっぽい”楽しみ方をするのは、どちらかといえば男性に多い。一方、実際に鉄道に乗って旅をして、景色や食べ物を味わい、その体験を共有する、五感を使った楽しみ方を好むのは女性に多い。
鉄道の旅は自動車と違って、一緒に旅をする誰も“運転手”にならなくていい。乗っている間はおしゃべりをしても、眠っていてもいい。気づいたら景色がガラッと変わっているのも楽しいはず。そうやって、全員で自由に旅の楽しみを共有できるのが最大の魅力です」
「鉄道が好きな女なんかいない」などと言われたのは昔の話。鉄道で働く女性が増える中、鉄道を楽しむ女性も増えている。その背景には、鉄道が女性に支えられ、女性も鉄道に支えられてきた歴史がある。
次の150年も、女性と鉄道の幸せな旅路が続きそうだ。
※女性セブン2022年12月1日号