人の不安につけこみ、高額な壺や印鑑を言葉巧みに売りつける「霊感商法」や「高額献金」が社会問題となっている。元統一教会信者で、詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリストの多田文明氏によると、霊感商法や高額献金に誘い込む手法として「巧妙なマインドコントロール」があるという。多田氏が自身の体験も交えて解説する。
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旧統一教会の信者として、教団のマインドコントロールの手口にまんまとはまり、約10年近い時を送りました。そこでは、どんな心理的誘導が行われているのでしょうか。
教団がこれまで行ってきた霊感商法や高額献金による被害は、組織的なマニュアルを用いて全国規模で繰り返し行った結果です。教団は、様々な社会常識を逸脱したお金集めを行ったわけですが、教団が使った悪質性の行為のひとつに、「自分が選んだように思わせて、実は、選ばされている」という、実に巧妙なマインドコントロールの手口があります。
過去に、街頭で「生活意識調査です」「手相の勉強をしています」と声をかけられた経験のある人も多いと思います。この目的は、旧統一教会の教義を学ばせるためのビデオセンターに誘い込むことです。教団の正体を隠した手口で誘われてしまうと、まさに「選ばされている」手口にはまっていくことになります。
貯金500万円を持っている架空のA子さんのケースから、どのように誘導されてしまうのかを拙著『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』の一節から解き明かします。
A 子さんがビデオセンターに通ってから、〈1カ月ほどして、教義がある程度、頭にすり込まれたところで、2日間の泊まり込みのセミナー(2 Day’s)に参加させます。ここでは受講生の心に訴えるような講義がなされますが、実はこの「お泊り」が大事で、教団では信者になると、ホームと呼ばれるところで四六時中、共同生活をすることになりますので、その第一歩として2日間のセミナーを経験させます。(中略)セミナーを終えたA子さんには不思議な高揚感があり、教団側はすかさず次のステップである、2週間の泊まり込みが基本の「ライフトレーニング」に誘われて、参加することになります。(中略)ライフトレーニングの最終日近くで、ようやく「統一教会」であることを告げられます。
そして次のステップである「4日間セミナー(4Day’s)」に参加することになり、その後も延々とトレーニングは続き、信者となる道が用意されています。おそらくA子さんは「自ら選んで先に進んでいる」と思うかもしれません。しかし、そうではないのです。すでに教義が心に刷り込まれている状況では、霊界の実在や神様の存在も信じさせられています。神様の言葉を守った行動を取らなければ「不幸になる」「地獄にいく」とも思わされていますので、先に進まざるをえない状況なのです。〉(『信じる者は、ダマされる。』より。以下〈〉内も同様)