人の不安につけこみ、高額な壺や印鑑を言葉巧みに売りつける「霊感商法」が社会問題となっている。元統一教会信者で、詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリストの多田文明氏によると、かつて問題になった催眠商法などの悪徳商法にも共通する手法があるという。多田氏が自身の体験も交えて解説する。
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周りとの環境を隔絶した状況で、教義や思想を教え込む。これはマインドコントロールにおける定番の方法です。これを何より得意にして、信者を増やしてきたのが、旧統一教会です。
教団に入ると、何かにつけて修練会やセミナーがあります。一般の人を街頭から教義を教え込むビデオセンターに引き入れた後には、信者教化のための2日間セミナー、4日間セミナーが行われます。いっぱしの信者になってからも、21日修練会や40日修練会があり、韓国・清平での先祖解怨式(先祖の恨みなどの悪因縁を解決する式)に至るまで、外部との連絡を一切絶たせたなかでの詰め込み式の場が用意されます。
なぜこうした方式で、人の心はマインドコントロールされてしまうのでしょうか。結論からいえば、環境を操作して、浅慮の状態にしてから騙す手法が使われているからです。拙著『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』で、その効果について解説しています。
〈高齢者を会場に集めて、高額商品を販売する催眠商法を例にあげれば、わかりやすいかと思います。催眠商法では、会場でたくさんの「ものを無料であげて」、感謝の思いを募らせます。こうした「ありがたい」思いを積み重ねながら、笑わせて、楽しい状況(興奮状態)を作りだし、浅慮の状態にしていきます。すると、しだいに高齢者は思考力が低下して、契約の良し悪しを冷静に判断できなくなるのです。その上で、数十万、数百万円もの「布団」や「健康食品」をすごく良い物のように紹介して販売します。一種の催眠状態にさせながら、ものを販売することから、その名がついています〉(『信じる者は、ダマされる。』より。以下〈〉内も同様)
こうして「浅慮」という状態にさせられて、判断力を奪われてしまいます。
〈浅慮とは、思考の範囲が狭まったり、本来の意思決定の状態から注意が逸らされてしまうなど、思考力、判断力が低下する心理状態のことで、こうなると普段なら行うはずのない、意思決定をしてしまいがちなのです〉