世界を代表する広告代理店「電通」。今年7月と11月、2回も東京地検特捜部などに家宅捜索された同社は、なぜ五輪からサッカーW杯、WBCまであらゆるスポーツ利権を手中に収めるようになったのか【前後編の後編。前編から読む】
日本代表がドイツ、スペインを撃破し、列島が沸いたサッカーW杯カタール大会も当然のように電通の影響下にある。ノンフィクション作家で元博報堂社員の本間龍氏が指摘する。
「今回のW杯は放映権が高騰し、日本ではABEMAが200億円出したと報じられていますが、放映権は電通経由で購入する必要があります。
電通におけるW杯ビジネスの節目となったのは2002年の日韓W杯で、電通は日本でW杯を運営できるのは自分たちだけだと実力を示した。おかげでFIFAとの関係は一層深まり、W杯の利権を確立したのです」
現在の電通は、五輪とサッカーW杯という世界2大イベントだけでなく、世界陸上や世界水泳、WBC(ワールドベースボールクラシック)などの放映権やスポンサー権なども握り、スポーツ界を支配している。
W杯カタール大会後は、2023年3月に開催予定のWBCで再び電通の影響力が発揮されるはずだと本間氏は言う。
「過去のWBC大会では電通が日本代表ユニホームの広告や放映権、マーケティング権を管理しており、『侍ジャパン』という名前を生み出したのも電通です」
その力の源泉は、電通の「仕切る力」であると本間氏は指摘する。
「五輪やW杯クラスの国際大会を仕切れる広告代理店は世界でも電通だけ。各競技団体としても、スポンサーとの面倒な交渉から放映権や肖像権の管理まで、すべてを電通がやってくれるのは効率がいいですし、何らかの失敗があっても電通が穴埋めしてくれる。JOC(日本オリンピック委員会)を筆頭に、各競技団体は電通にお任せ状態です」