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5兆円企業「電通」 スポーツ巨大利権を手に入れた背景に「仕切る力」と「第4の権力」

五輪汚職事件で逮捕された高橋治之容疑者(写真/AFP=時事)

五輪汚職事件で逮捕された高橋治之容疑者(写真/AFP=時事)

 もうひとつの源泉は「第4の権力」を手中にしたことにある。スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏が語る。

「民放テレビ局は五輪はじめ、普段の放送やイベントで電通にスポンサーをつけてもらう立場。しかし、東京五輪で電通はスポンサー1業種1社の原則を破ってまで朝日、読売、毎日、日経の大手新聞4社をオフィシャルパートナーに、産経新聞と北海道新聞をオフィシャルサポーターに引き入れました。本来、メディアはイベントや当事者と距離を置いて報道する役割があるのに、彼らがスポンサーになったことで、電通批判のタブー化に拍車がかかりました」

 実際、2016年に海外メディアが東京五輪招致の裏金疑惑を「Dentsu」と実名で報道したが、日本では電通の名を報じないメディアが多かった。

競合他社も支配

 電通は広告業界全体に影響力を持つ。2021年度の売上高は5兆2564億円。2位博報堂の1兆5189億円、3位ADKホールディングスの3528億円を大きく上回る。

 電通一強の状況を、東京五輪招致活動中の2009年に石原慎太郎・東京都知事は「電通が持っている影響力は、他の広告会社では及ばない」と評した。本間氏が語る。

「スポーツビジネスにおいては競合他社であっても電通を通さないと事業に参入するのは難しい。今回の五輪汚職事件で博報堂やADKまで捜査されたことは、広告業界の電通支配の証拠でしょう」

 いまや電通の影響力は国策にまで及ぶ。コロナ禍では国の持続化給付金やキャッシュレスポイント還元事業を受託し、さらに再受託する“中抜き”が発覚。権力の中枢に彼らは食い込んでいる。

 今回の五輪汚職事件は、「我が世」を謳歌した電通の転落の始まりになるのか。谷口氏が言う。

「特捜部は慎重に証拠を集め、時間をかけて事件を捜査しています。五輪汚職に特捜部が切り込んだ以上、これまでダンマリだったメディアも電通の名を報じざるを得なくなった。もはや、電通がタブーとされた時代は終わりました」

 一連の五輪汚職について電通に聞くと、こう回答した。

「当社グループは、全容の解明に向けて、調査に全面的に協力しております。ご質問については、当局の調査に支障をきたすおそれがありますので、回答は控えさせていただきます」(広報部)

 栄華を極めた電通は岐路に立たされている。

(了。前編から読む

※週刊ポスト2022年12月23日号

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