竹迫さんが知る、ある実業家の妻は一家の資産を管理していた。旧統一教会は妻に巧みに接近して持病を聞き出し、彼女の弱みを突いた。
「奥さんは2人の子供に不幸が訪れることを極端に恐れていました。教団は夫に隠れて“信仰をしないと子供が不幸になります”と何度も持ちかけた。自分に信仰がないから病を患ったと信じた彼女は子供を救うため、20年間で4000万円を献金しました。それから脱会にこぎつけたものの、夫が事故に遭った際に彼女は“私が統一教会を脱会したから事故になった”と心底おびえていた。実際に家族が脱会を喜んでも、当人は脱会してから悩むことがほとんどです。周囲との温度差が本人を孤立させることが多く、この問題の根深さを感じます」(竹迫さん)
近年は内向的な若い世代に狙いを定めるケースもある。
「オウム真理教がヨガ教室を通じて勧誘したのは有名ですが、最近の新興宗教は秋葉原のゲームショップを訪れたおとなしそうな客に近寄り“ぼくもこのゲーム好きなんです。ちょっとお茶しませんか”と声をかけたり、本屋でいきなり“おもしろい本はありますか”と尋ねたりして勧誘すると耳にしました。内向的でオタク気質の若者が標的になっているようです」(小川さん)
霊感商法に関する相談の8割が女性から
宗教に近い世界観を持つ“スピリチュアリティー”が窓口になることもある。近著に『カルト宗教』がある全国統一教会被害対策弁護団副団長の紀藤正樹弁護士が指摘する典型的な手口は、雑誌などに開運ブレスレット(数千~1万5000円程度)の販売広告を出し、「使い方が重要なので電話で教えます」と電話番号入りの但し書きをつける。
使い方を尋ねる電話がかかってきたら被害者の悩みを根掘り葉掘り聞いて「もっと効く商品がある」と誘導したり、「効き目がないのは悪霊が強いからで除霊が必要。さもなくば、もっと悪いことが起こる」と不安を煽り、「除霊で様子を見てダメなら返金する」と次のステージに誘い込む。
「そこまで時間をかけて誘導すれば“不安を解消したい”という心理が働き、言われるままに次の段階に進む人が多い。そうした心理操作を駆使されると数十万円から数百万円の祈祷料を払ったり、高額の水晶玉や浄化石を次々と買うことになります」(紀藤さん)