旧統一教会(世界平和統一家庭連合)を発端に注目される「宗教二世」の問題。驚いたのはそのほとんどが、母親が信仰を主導し、多額な献金をしていたことだ。女性は結婚や出産、育児で役割を与えられ、社会進出や男女格差、価値観の多様化などさまざまな転換期を抱えてきた。多くの女性はターニングポイントで苦悩し、何かにすがりたくなり、その悩みにつけ込まれ、狙われていた──。
日本社会に潜む暗部を照らし出した旧統一教会問題。宗教二世や被害者家族が懸命に支援を求め、臨時国会会期末ギリギリの12月10日に被害者救済法が成立した。同法には、「霊感」などで不安を煽る悪質な寄付勧誘行為に対する罰則や取消権などが盛り込まれた。
その過程で浮かび上がったのは「新興宗教と女性」の深く強い結びつきだ。安倍晋三元首相を銃殺した山上徹也容疑者の母親は教団に1億円以上を献金としてつぎ込んでいた。また、勇気ある顔出しでの記者会見に臨んだ宗教二世の小川さゆりさん(仮名)の母親は、全資産を教団に投げだし、家庭は常に貧しかったという。実名で被害を訴えた橋田達夫さんは、信者である元妻が教団に1億円を献金し、家庭崩壊の末に長男が焼身自殺するという痛ましい結果を招いている。
いずれもわれわれには、にわかに理解しがたい行為のように思える。だが旧統一教会の元信者で、脱会支援活動を続ける日本基督教団白河教会牧師の竹迫之さんは、女性こそが熱心な信者だと語る。
「いま、新興宗教を偽装したカルトへの高額献金で話題になっているのは、ほとんどが女性です。結婚や出産、育児などライフステージが大きく変わる女性は、人生設計の中で思い描いていた未来を中断されるケースが少なくない。また、社会構造や文化、慣習などさまざまな要因から、カルトが女性を“カモ”にする事例が目立ちます」
女性は男性よりも新興宗教に強く惹かれるのだろうか。それとも、新興宗教が女性を狙っているのだろうか。
振り返れば1970年代後半以降、新興宗教は大学生を中心に信者を獲得してきた。そこには、20才前後の若者は健康的で充分な体力があり、布教活動に励んで資金を稼ぐ「労働力」として最適という判断があった。