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「箱根駅伝のランナーに選ばれなくてもいい」 後発で厚底シューズ開発に参入したデサントの勝算

デサントが開発した新しいコンセプトの厚底シューズ「DELTA PRO RACE」(ピンク)

デサントが開発した新しいコンセプトの厚底シューズ「DELTA PRO RACE」(ピンク)

「厚底をうまく履きこなせない」市民ランナー向け

 そうしたなかで、異色の厚底シューズ戦略を打ち出すのが、デサントだ。

 同社は「コンマ1秒を競うトップランナーだけでなく誰もが履ける」という商品コンセプトで厚底シューズの開発を始め、2022年8月末に「DELTA PRO RACE」を発売した。デサントジャパン・ブランドPR課の担当者はこう話す。

「一般ランナーの間でも厚底ランニングシューズの推進力は認識されているものの、ケガが怖くて履くのが不安だという人たちが少なくありません。そういった、マラソンなどで自己最高記録を狙いたいが、厚底がうまく履きこなせないという市民ランナーのために開発したシューズです」

 従来の厚底シューズは衝撃を吸収する厚いソールにカーボンプレートを装着。バネのように推進力を得られる仕組みだった。しかし、スピードが出る代償として、着地で脚が横にぶれたり、姿勢が崩れやすくなったりするため、脚に大きな負担がかかってケガにつながるとされてきた。そのため筋力を鍛えたトップランナーは対応できても、市民ランナーには難しい面があった。その悩みにデサントは正対したのだと前出の担当者は続ける。

「足の接地面、重心移動、足首から下の骨格などのデータから硬度を調整したカーボンプレートを採用し、それと組み合わせた際に安定感が生み出されるアウトソールの硬度を導き出しました。その結果、安定感を保ちつつ推進力が高い厚底カーボンシューズが開発できた。市民ランナーでもケガをしにくく、足を踏み出しやすい構造になりました」

 デサントでは、箱根駅伝やオリンピックのマラソンを走るような最上位層のランナーではなく、自己ベスト更新に挑戦する市民ランナーにターゲットを絞っているという。同社の戦略によって、市民ランナーの足元の勢力図は塗り替えられることになるのだろうか。(了)

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