土地を売買する場合、動く金額も大きいだけに慎重を期したいが、悪徳業者に引っかかってしまうことも……。実際にそういったケースに遭遇した場合、どうやってお金を取り戻せばいいのか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
「所有している雑木林を売却してほしい」と業者から持ちかけられた母は、「どうせ買い手のつかない土地だから」と、売却することに。そのとき、業者から節税対策としてほかの土地の購入をすすめられ、500万円を支払ったそうです。
ところが、いつになっても売却した雑木林の代金が振り込まれず、業者とは音信不通になりました。契約書を確認すると、新しい土地は雑木林よりも500万円高い金額で契約されており、高齢者を狙った詐欺だと発覚。お金を取り戻すことはできますか。(福岡県・50才・パート女性)
【回答】
相談内容を整理すると──お母さんは買い手のつかない雑木林をある価格(A万円)で業者に売って、業者から500万円で土地(甲土地)を買うつもりで500万円を支払って甲土地を取得したが、契約書では甲土地の代金は500万円ではなく500万円+A万円であり、雑木林のA万円分は業者が代金を支払わないまま、その所有名義がお母さんから移転されてしまった、ということだと思います。
お母さんの意図とは違う結果ですが、業者が最初から雑木林の代金を支払わないで甲土地を500万円で売りつけるつもりなのに、お母さんには「雑木林の代金を支払う」と話して(欺罔して)、お母さんに「支払ってくれる」と思わせ(錯誤に陥らせて)、無料で雑木林を手に入れた(騙取した)とすれば、詐欺です。
ただ、お母さんは甲土地を買う意図をもっており、その目的は達成しています。その場合の被害は、雑木林の所有権になります。もともと雑木林は買い手のつかない土地ということですから、そんなに高額とは思えません。そうすると一見たいした被害ではないように見えます。しかし、甲土地が500万円の価値のある土地かどうかは非常に疑わしいと思います。