家計

私が「18万円の補正下着」を買わされる羽目になった訪問販売の手口

「ない袖は触れない」はずなのだが…(イメージ)

「ない袖は触れない」はずなのだが…(イメージ)

 コロナ禍がやっと終息の気配を見せてはいるものの、先行き不透明なこの時代、老後資金がないと焦っている人も少なくないはず。貯めたくても貯められない人は、仕掛けられた散財の罠にハマっていることも。長年、貯金ゼロでやってきた女性セブンの名物記者“オバ記者”こと野原広子さんが、自身の浪費体験を告白する。

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 そもそも貯金の習慣がない私は、人から高級品をすすめられたら返事は1つ。「ノースリーブ、ノースイング。ない袖は振れない」。そう言うと、「やだ、アハハ、おかしい(笑い)!」と笑われておしまい。どんなに腕のいいセールスマンだって、お金のない人間に説明するのはムダだもの。

 こうして、「がん末期の人が半年で回復した」という1本2万円の健康ジュースも、「要介護5の人がいまは仕事に出ている」とかいう漢方薬もパスしてきた……はずの私なのに、なぜか断れず、高額な要らぬものを買ってしまうことがある。

 あれは50才をいくつか過ぎたとき。掃除が苦手な私を見かねて、OLの友達・N香がよく掃除に来てくれていたの。彼女が「知り合いが補整下着の訪問販売を始めたの。面白いコだから会うだけ会ってくれない?」と言う。顧客名簿に名前を載せたら無料で高級綿のショーツをくれるんだって。

 その日もN香がわが家の掃除を手伝ってくれることになっていて、補整下着販売のコを「ついでにちょっとだけ連れてくる」とのこと。だけど、10分もしないうちにまずいなと思ったわよ。

 会ったばかりのそのコの手際のいいことといったらない。トイレ、お風呂、台所、水回りとアッという間にピカピカにして、さわやかな顔で「押し入れも片づけます?」なんて言われてごらん。無料のショーツだけもらって帰せる?

 実はそのとき、N香のもう1人の友達M美もついてきてたんだけど、彼女がブラからガードル、ボディースーツまで何着も試着し始めた。で、その挙げ句、「う~ん、やっぱりいいや」と言い放ったの。

 私とN香の顔色は一気に変わって、気がついたときはM美が試着した一式を全部私が買うことになって、18万円のローン契約書にサインしていた。

 その話を別の友達にしたら、「あぁ、ダメダメ! 訪問販売で空気読んだら負けだよ」と首を振る。「掃除? 自分から頼んだわけじゃないでしょ? そんなときはどんなに気まずくても、相手が根負けするまでやり過ごすしかないのよ。てか、そもそも、その連中を連れてきたN香って人、大丈夫?」とも言われた。結局、その下着は意地でしばらく身に着けたけれど、そういう経緯で買ったものは愛せないのよ。N香ともいつしか縁が切れてしまった。

 でも、元はといえば、苦手な掃除をタダで誰かにしてもらおうとした負い目があったことが散財の始まりなのよね。お金にだけじゃない。自分にも甘かったんだって。

【プロフィール】
野原広子/「オバ記者」の愛称で知られる。1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。

※女性セブン2021年12月9日号

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