他国の観光客に写真を撮られる
一方、受け入れに消極的な国のひとつが韓国だ。
韓国では中国からの旅行客に対して、事前のPCR検査陰性証明の取得を義務付けた上で韓国到着後、厳格なPCR検査を実施している。
中国のSNSでは、韓国に到着後、中国人旅行客だけが首から黄色いプレートをかけさせられた上で、PCR検査会場まで軍人に連れていかれる様子が話題になっている。その光景を物珍しがって他国の観光客が写真を撮るのだが、“これでは犯罪者が市中引き回しにあっているのと変わらない”と中国人旅行客は憤慨している。
検査終了後は狭い空間に押し込められ、結果が出るまで5時間も待たされたそうだ。陽性となれば1週間隔離されることになるが、費用は自己負担、その上隔離先はベッドすらないような劣悪な環境だったという。
フランス、アメリカの対応は、韓国とは異なるようだ。実際に現地を訪れた中国人旅行客のSNSによれば、実体験として、パリ、サンフランシスコなどの空港では何の障害もなく、すんなりと入国できたようだ。
中国の国民旅行消費報告によれば、2019年における中国人旅行客消費額の上位10か国は順に、タイ、日本、オーストラリア、マレーシア、シンガポール、インドネシア、アメリカ、ベトナム、イギリス、UAE(アラブ首長国連邦)である。多くの中国人が日本旅行を楽しみにしているはずだ。
コロナ禍で厳しい経営を強いられてきた日本のインバウンド関連企業だが昨年6月以降、入国制限が段階的に緩和されたことで、ようやく回復の兆しが見えてきた。今回、日本にとって最大の得意先である中国が海外旅行の事実上の解禁に至ったわけで、このタイミングを是非ともビジネスに生かしたいところだろう。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。楽天証券で「招財進宝!巨大市場をつかめ!今月の中国株5選」を連載するほか、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。