ボディの大きさを感じさせない
そんなキャビンの上質感にどっぷりと浸かりながら走り出してみます。最高出力635馬力、最大トルク900Nmを発生する6.0LのW型12気筒エンジンは、車両重量2520kgの巨体を楽々とスムーズに加速させていきます。ベーシックな4.0LのV型8気筒エンジンは550馬力あり、これでも十分だと思っていたのですが、さすがに635馬力はゆとりたっぷりでした。実はベントレーには以前から「ボディの大きさを感じさせない運転のしやすさ」という魅力があります。走り出して10分もするとボディの大きさが感覚的に理解できるようになります。
もちろん今回のベンテイガにも、その感覚は健在というか、むしろ目線が高く見渡しの効くベンテイガは、さらにその魅力がより光っていたのです。低速から出力をしっかりと発揮してくれるエンジンのお陰もあり、全長5145mm×全幅1995mm×全高1755mmという大きなボディが、かなり小さく感じる運転感覚です。これならば町中の混雑路でもストレスが少なく走れます。多分、この感覚があるからこそ、女性ドライバーの姿を多く見かけるようになったのだと思います。
単に高級な装備をてんこ盛りにしたり、ブランド力に頼って見栄えを効かせるといった理由だけでゴージャスとは言えません。すべての動きがエレガントで、実際に走らせれば誰もが理解できる、その名に恥じないストレスフリーな満足度。その感覚があるからこそ、3000万円オーバーという高額であっても購入しようとオーナーたちは考えるのだと思います。今後、低速から強力なトルクを発揮するモーターを使った電動車がSUVの世界にもどんどん投入されてきますから、しばらくはクロスオーバーSUVから目が離せないと思います。
【ベントレー・ベンテイガ スピード】
価格:3410万円~(税込み)
全長×全幅×全高=5,145×1,995×1,755mm
最小回転半径:未公表
最低地上高:未公表
車重:2,520kg
トランスミッション:8速AT
駆動方式:4WD
エンジン:W型12気筒ツインターボ 5,945cc
最高出力:467kW(635PS)/5,000rpm
最大トルク:900Nm(91.8kgm)/1,750-4,500rpm
燃費:14.7km/100km(WLTPモード)
【プロフィール】
佐藤篤司(さとう・あつし)/自動車ライター。男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書『クルマ界歴史の証人』(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。