相続税対策として広く行なわれてきた年110万円の非課税枠を利用した暦年贈与。昨年末の与党税制改正大綱に盛り込まれたのは、この暦年贈与の「持ち戻し期間の延長」だ。現行制度では、相続が発生した(親などが亡くなった)場合、直近の3年間の贈与については相続税の課税対象となる。“親が死にそうだから慌てて贈与する”という相続税逃れを防ぐ趣旨とされるが、その持ち戻し期間が2024年1月1日以降の贈与については3年から7年へと延長される方針が決まったのだ。
まさに生前贈与や相続における課税が強化されようとしている今。どうにかして、税金を節約したいという人も多いだろう。そこで今回は、親が亡くなって不動産を相続する際に活用すべき節税の裏ワザ、そして現金を不動産に変えることで実践できる節税テクニックを紹介する。
相続の裏ワザ【1】小規模宅地等の特例は「2回使える!」
相続財産のなかの不動産の評価額を圧縮できる「特例」を活用することはとても重要だ。税理士法人タックス・アイズ代表社員の五十嵐明彦氏が解説する。
「自宅の相続に際しては、330平米(100坪)までの土地の評価額が8割減になる『小規模宅地等の特例』があります。親が坪単価の高いエリアの持ち家に住んでいる場合は、節税効果が大きくなります」
この特例の適用を受けるには要件がある。
「自宅を相続するのが配偶者なら必ず適用を受けられるし、亡くなった被相続人(親など)の自宅に同居していた親族(子など)も、相続税の申告期限まで土地を売らずに住み続ければ適用される。別居している親族でも適用を受けられる『家なき子特例』と呼ばれる制度もありますが、細かい規定を満たす必要があるので使う場合は専門家に相談しましょう」(同前)
さらに五十嵐氏は、「ひとつの家族がこの特例を『2回使う』という選択肢もある」と続ける。
「たとえば父と母と子供1人が同居しているケース。父が亡くなった際に、母と子が自宅不動産を分割共有するかたちで小規模宅地等の特例を使って相続し、何年か経って母が亡くなった時に母の持ち分についてもう一度、子が特例を使って相続することで節税効果が高まるケースがあります。父が亡くなった時、母は1億6000万円の配偶者控除を使えるので家族の相続税額を抑えられるが、後に母が亡くなった時には使えないので相続税が高くなりがち。なので、母が亡くなった時のために特例による節税効果を一部残しておくという考え方ですね」(五十嵐氏)