いくら高性能でも過信は禁物
スタッドレスが主流となって30年以上経過したわけですが、その間にタイヤメーカー各社の努力によって、性能は大幅に上がりました。たとえば冬になっても硬くなりづらい素材の研究開発だけでなく、コンパウンドに気泡を混入したり、ひっかき素材である異物(クルミの殻など)を製造段階から混入させたりするなど、多彩なアイデアが盛り込まれてきました。こうして、最近ではスタッドレスの性能は飛躍的に上がっています。
そんな中でもブリザックといえば「頼りになるスタッドレスタイヤ」として雪国ユーザーの間で高い信頼性を得ています。実は今回の取材の目的地のひとつとなった長野県の女神湖では、日産の「氷上試乗会」が開催されていました。スケートリンクのような氷上でも「日産車の優れた制御技術があれば安定して走れるのでテストして下さい」という目的があるわけです。ノートからエクストレイル、さらにはフェアレディZやGT-Rまで揃えられていたのですが、試乗車のブリザック装着率は100%。さらに現地までの試乗テスト用として使ったホンダ・フィット・クロスターにも最新のブリザックVRX3が装着されていました。
さて、スタッドレスタイヤの評価ですが「ドライ路面」、「雪上」、そして「アイスバーン」といった、3つの使用状況に分けて考えてみましょう。まず都内から一般路と高速道路で現地に向かったのですが、サマータイヤとの気になる差は、やはりロードノイズが大きくなることです。こうしたパターンノイズが大きくなることはスタッドレスタイヤでは仕方ないことなのですが、それでも“不快になるレベル”とは感じませんでした。スタッドレスタイヤは柔らかい発泡ゴムなどを使用しておりサマータイヤより早く減ります。丁寧な運転に心掛けたことにも起因するのですが、車内での会話や音楽を楽しむ上でストレスを感じるレベルではありませんでした。今回のVRX3はこうしたロードノイズを低減しながらもライフ性能(製品寿命)を17%向上させたといいます。
しばらく快適なドライ路面の走行を続けワインディングを駆け上がると、次第に路面には一部凍結路、一部圧雪路といった雪と氷が混在するような状況に変化しました。最も注意を要する状況ですが、アイス性能は従来比20%以上向上したというだけあり、ほとんど滑る感覚もなく走行できます。
次第に雪が積もった圧雪路になっていきます。前のモデルであるVRX2でも圧雪路での安心感は相当高かったのですが、最新のVRX3はさらに安定感を増していました。4WDのフィット・クロスターはグイグイとワインディングを駆け上り、コーナー手前のブレーキングも安定していました。最も気を遣うことになる下りのブレーキングとコーナリングも安定していました。
ただし、この安定感があるからと言って過信は禁物です。個人的には雪道や凍結路ではサマータイヤの時より20~30%、いや状況によっては50%以上も速度を落として走ります。雪道に慣れた地元の人たちは意外と飛ばしていて、どうしてもあおられるような状況が起きることがありますが、事故を起こせば元も子もありません。