森口亮「まるわかり市況分析」

FOMCや雇用統計、GAFAM決算を通過 いま「市場全体のPER」に注目する2つの理由

金融政策の転換がPERに大きな影響

 PERには、「割安性の目安」としての側面に加え、「将来への期待値」という側面もあります。

 2023年の株式市場では、日米ともに金融政策が転換点に差し掛かっていることが、「将来への期待値」としてのPERの数値に大きな影響を与えています。

 まず米国についてです。急速に進んだインフレへの対応のため、米国は2022年初頭から急速な利上げを実施しました。金利が上昇すると、資金の借り入れに二の足を踏む企業が増えると予想されます。資金を借りて投資したとしても、金利以上の利益を出せる見込みがないと判断する企業が出てくれば将来の成長率が鈍るため、S&P500におけるPERは18倍以下で推移する傾向があります。

 実際に、急速な利上げを継続していた2022年は、ほとんどの期間においてPERが18倍を超えることはありませんでした。

 そうしたなかで、2022年12月のFOMCで利上げ幅が縮小されました。金融政策の転換点に差し掛かりつつあるのではないか、という期待から株価が上昇しました。

 仮にインフレが落ち着き、利上げ停止、さらに利下げまでもが実施されることになれば、企業が資金を借りやすくなり、設備投資など事業の拡大が可能となります。低コストでお金を借りることができれば、その資金を投資に回しても利益を出せる、と判断する企業も増えるので、期待成長率が高まります。

 過去の推移から、仮に金融政策が緩和傾向となればPERは20倍程度まで許容される相場展開が予想されます。

 ただし、2月3日に発表された雇用統計において、非農業部門雇用者数は市場予想(18.5万人増)を大きく上回る51.7万人増という結果になり、インフレ高止まりを意識させられる結果となりました。また、GAFAMの決算についても、市場予想を下回る決算が相次ぎました。

 結果として、予想EPSは決算通過後も上昇していません。金融政策の転換期待についても、インフレ懸念がまだ払拭できないことから、様子見せざるを得ない状況です。したがって、S&P500については、次回3月中旬のFOMCまで金融政策の方向性を探るような展開が予想されます。

日本は金融緩和政策の維持で株価に安定感

 一方、日本はどうでしょうか。昨年12月におこなわれた日銀の金融政策決定会合にて、イールドカーブコントロール(YCC)の長期金利の許容幅が修正されました。金融緩和から金融引き締めへの転換が意識されています。

 結果として、12月の会合から年始にかけては、株価がPER12倍まで下落し、下降トレンドへの転換が警戒されました。

 しかし、今年1月の日銀会合時には、現状の金融緩和政策の維持を発表。黒田東彦日銀総裁も、金融引き締めへの転換に対しては否定的な見解でした。その後、株価は再び安定感を取り戻しつつあります。

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