物価高に為替の激しい変動と、日本経済は激動のさなかにある。“経済予測の達人”と呼ばれるニトリホールディングス(HD)代表取締役会長の似鳥昭雄氏(78)は、日本経済の今後をどう見るか。自社の成長への道筋を含め、大いに語った。【全4回の第2回。第1回から読む】
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過去に幾度も経済予測を的中させ、「目利き」として知られる似鳥会長。長引くウクライナ戦争や世界的なインフレなど不安要素が渦巻く2023年の日本経済をどう見るか。
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日本の景気を語る前に、まずは世界の動向を見る必要があると思います。1月10日公表の世界銀行による2023年世界経済の実質成長率の予測は、2022年の推定値である2.9%から1.2ポイント減速し、1.7%となり、世界不況に陥った2009年、2020年に次いで、この30年間で3番目に低い水準になるというものです。
昨年6月時点の予測値、3.0%からは1.3ポイントの下方修正でした。インフレ率の上昇や金融引き締めなどの経済ショックは、世界不況を引き起こす可能性があると警鐘をならしています。
世銀の予測を個別に見ると、成長率が急減速するのは、インフレ退治のための利上げが続く地域です。アメリカは、2022年の1.9%から2023年は0.5%に低下。2023年の予測値は、6月時点予測から1.9ポイントの大幅な下方修正です。アメリカの2022年3月以降の利上げの影響は、経済のバロメーターである中古住宅販売戸数にはっきりと表われています。
昨年5月まで前年比90%以上で推移してきた数値が、6月以降は毎月5~6ポイント程度悪化を続け、8月は前年比81.6%、9月は74.9%、10月は69.9%、11月は63.3%となりました。このままだと、春先までに前年比5割減に達しかねません。リーマンショック後の2009年の水準に近付きつつあります。ウクライナ問題を抱えているユーロ圏では、2022年が3.3%から2023年は0.0%へと極端な成長鈍化が予測されています。
こちらも2023年の成長率は、6月時点の予測から1.9ポイント下方修正されています。一方、中国については2022年が2.7%、2023年が4.3%と改善が予測されていますが、以前のような高成長率の軌道に戻り、欧米の減速を補うのは難しいと思います。景気の牽引役が見当たらないため、世界経済全体として、景気には下振れのリスク、不況化するリスクが高いと思います。