そもそも遺伝子組み換えとはどういう技術なのか。その一例が、サントリーが開発した「青いカーネーション」だ。元来カーネーションには青い色の遺伝子がないが、ペチュニアなどの青色の色素の遺伝子をカーネーションの遺伝子に組み入れることで、青いカーネーションが生み出された。
夢の実現として語られることの多い話だが、それが口に入れるものとなると不安が残る。米ボストン在住の内科医・大西睦子さんはこう話す。
「作物に動物や微生物などのほかの遺伝子を入れるのが、遺伝子組み換え飼育品です。この『種の壁』を越えることに危険性を感じる人が多い」
現在、日本国内ではGM大豆やGMトウモロコシは生産されておらず、アメリカやカナダからの輸入された原材料については遺伝子組み換えかどうかの表示が義務付けられている。
例えば納豆や豆腐の原材料を見ると「遺伝子組み換えでない」といった表示があるはずだ。その表示制度が、この4月から変更される。これまではGM作物の「意図せざる混入」を5%まで認めていたが、新制度では不検出(混入率0%)でなければ「遺伝子組み換えでない」と表示できないことになったのだ。
より厳密に、より安全になるように思えるが、食品問題評論家の垣田達哉さんはこう懸念する。
「北米産大豆で『100%非GM』であることを証明することは現実的には不可能です。なにより、今回の件で遺伝子組み換えそのものへの関心がなくなり、消費者は気づいたらその商品が遺伝子組み換えかどうかすら、気に留めなくなるかもしれません」
フランス在住のジャーナリスト・羽生のり子さんも国内のGM作物の現状をこう指摘する。
「GM作物は主に家畜の飼料に使われています。直接、人間が食べるものではないので、食肉に『遺伝子組み換え』飼料を使ったかどうかの表記義務はありません。しかし、それを食べて体の中に入ったときに、どんな害が出るかはわからないのです」