独居のほうが幸せか
同様に、配偶者を亡くしたことを機に子供と同居するという判断にも、慎重さが求められる。たしかに、親が所有する広い家で一緒に暮らせば、子供は小規模宅地等の特例が使えて相続税の節税になり得るが、問題も生じる。『トラブル事例で学ぶ 失敗しない相続対策』著者で吉澤相続事務所代表の吉澤諭氏が言う。
「息子から折半での二世帯住宅建設を持ちかけられて何千万円と払ったものの、嫁との折り合いがつかず居心地が悪いといったケースはよくあります。地方の自宅を売って都市部の子供の家での同居を選んだ場合なども、なかなか馴染めないことが多いのが現実です。夫に先立たれた女性が娘と同居して1か月も経たないうちに“もう帰りたい”と漏らしているケースもある。話し合いや予行演習なしに見切り発車で子供と同居すると、“こんなはずではなかった”という不幸を招きかねません」
できる限り「ひとり暮らし」を続けるのも、有力な選択肢かもしれない。
「食事の宅配や見守りなど、自治体の在宅支援サービスをフル活用する方法もあるし、親子で1日1回は電話やLINEで連絡を取り合うといった安否確認の決めごとをして、ひとり暮らしのリスクに対応している家庭もあります」(吉澤氏)
※週刊ポスト2023年2月24日号