相続人となる家族がいない「おひとりさま」の相続で、遺産が「国庫帰属財産」として国庫に入れられてしまうケースが急増している。
最高裁判所の調べによると、2021年度は国庫に入った相続財産額が過去最高の約647億円を記録(2020年度は約600億円)。この額は10年前のおよそ2倍に相当する。相続に詳しい行政書士の明石久美氏が指摘する。
「高齢のおひとりさまが増加するにつれ、国庫に入っていく遺産額は今後さらに増大すると考えられます」
明石氏は、「遺産が国庫入りするケースは独身男性に多い傾向がある」と語る。
「自分が死んだ後の財産についての相談が増えていますが、その多くは女性からのもの。男性は自分が死ぬことを考えたくないのか、準備を怠り亡くなってしまうケースが多いと感じます。遺言書を残すといった、生前の準備が大切です」(明石氏)
おひとりさまで法定相続人がいなくても遺言書を書いておけば、第三者や寄付先に自分が望むように遺産を託せる。しかし、遺言書がなかったり不備があったりすると、自分の財産が“国庫に没収”となる可能性が高くなる。
それはつまり、故人の「世話になった人に遺産を渡したい」「社会貢献のために寄付したい」「汗水垂らして働いて貯めた財産を国に持っていかれたくない」といった意思が無視されてしまうということでもある。