・公立の中高一貫校を目指すE君。私立の難関校にも合格し、「どちらに行くのが良いでしょう」と保護者から相談の電話。1時間近く、相談に名を借りた自慢話に付き合わされる。
・名門私立大の付属校を狙うF君。「試験問題を持ち帰ってきたから正解を知りたい」とのこと。“答えが分かっても結果は変わらない”という言葉をグッと飲み込み、急いで問題を解く。
・とにかく過保護な家で育ったG君が、合格は難しいと思われていた私立中学に合格。大興奮した両親から「どうしてもお礼がしたい」と言われ、押し切られる形でG家へ。10分か20分で帰るつもりが、引き止められて結局2時間以上滞在。「後日、改めてお礼を」と言われたが、その後、特に連絡無し。
・気が小さいところがあるH君。「不安になったら何時でも電話していいからね」と言ったら、本当に深夜に電話してきて「眠れません」とのこと。電話口で“眠れるストレッチ”を教える。
……ほかにも、最後まで受験校を絞りきれない子の母親とLINEで連絡を重ねたうえ、直前に夜10時頃まで面接の練習をしていたところ、夫から浮気を疑われる騒動もあったとか。丁寧に相談に乗ることを心がけているが、不合格だった子の親から怒鳴り込まれたり、恨み節を延々と聞かされたりすることもあり、「毎年2月は確実に体重が減る」と苦笑する。
入試が終わっても激務は続く
入試さえ終われば、子供たちは開放感に浸れるが、塾スタッフには、新たな生徒を獲得するという重大なミッションが待ち受けている。ここで手抜きをすれば確実に塾の経営が傾いていく。
合格した子に合格体験記をお願いし、塾の前に合格者の名前や人数を張り出し、保護者に「知り合いの子を紹介してください」と営業活動をお願いし、ポスティング用のビラを作り、年度替わりで辞める学生バイトを補充し、ホームページの情報を更新し、春期講習のテキストを作り、オンラインシステムの説明会を開き……やらなくてはならないことは無限と言っていいほどある。受験が終わった子を集めて「報告会」をやったり、スタッフの慰労会を行ったりと出費も多い。