先に見たものに囚われる――アンカリング効果
アンカーというのは、船を固定するいかりのことで、いかりで船を固定することをアンカリングと言います。アンカリング効果は、ここから来た言葉で、先に見た数字や情報が、その後の意思決定や判断に大きな影響を与えることを言います。
これを利用した販売方法が、セールの値札です。さきに「10,000円」と書かれた上から、「3,000円」と書き直された値札を見ると、かなりお得な品物に見えます(7割引き!)。これは「10,000円」という元の値段を基準に判断しているからです。
投資においてもアンカリング効果で、判断してしまうことがよくあります。たとえば、過去の高値に近づくと下落し、過去の安値に近づくと上昇する株価の動きをしている銘柄がありますが、その過去の高値まで来ると「高い」、安値まで来ると「安い」というように、考えている投資家が多いことも影響しているでしょう。株価の「高い」「安い」の判断を、過去の株価を基準に考えているというわけです。この場合は、他の人の行動を予測することで、うまく投資行動に活用することができますよね。
一方、よくないアンカリング効果は、自分が買った株価、売った株価に囚われてしまうことです。たとえば1000円で買った銘柄を800円で損切りし、その後1200円で買うのは、かなり抵抗があります。しかし、上昇トレンドに転じて、上値を追っていくような展開になれば、自分の過去の買値や売値を無視して買ったほうが利益も出しやすいでしょう。
含み損でも保有したままにする――現状維持バイアス
人は、たとえ今の状況が快適でなかったとしても、変化するより現状維持を好む傾向にあります。たとえば格安スマホに切り替えたほうがいいと分かっていても、お高めの通信キャリアを使い続けているといった状況です。
投資行動でいえば、経済や為替の動向が一方方向に進むように考えてしまうのが、現状維持バイアスです。
また、「損失を抱えたまま保有しているよりも、売却して新たな株を買ったほうがいい」と分かっているのにやっぱり損切りできないのも、現状維持バイアスのしわざと言えます。
このように、投資でありがちな失敗が、“こころの罠”であることを知っていれば避けることができます。また、感情のままの投資行動を避けるために、自分なりの投資のルールを作っておくことも重要です。
失敗したときの投資行動がどうだったか、それを避けるためには、どうすればよかったかなど売買記録をつけると、それを避けるためのマイルールがおのずとできるでしょう。