中学受験をする理由としては、「東京だと女子の高校受験の選択肢が少ないから」「うちの息子は内申点がとれるタイプじゃないから」が最も多い。他には、「主張が強い娘なので男子と対立しちゃって」「小学校のクラスが学級崩壊していて、子供が行きたがらなくなっている」「治療に何年かかかる病気で、他の子と同じように動けない。公立中学に相談に行ったけれど、ちょっと無理そうかなと判断したので、手厚い私立に入れるしかない」というように、事情を抱えているケースも多い。
Aさんはこの春から正社員になるという。
「勤務先はパートだけではなく、社員もどんどん辞めていきます。それで私に声がかかったんです」
新卒で損害保険会社に就職し、コールセンターの管理をしていた。その経験を買ってくれたのか、今の職場でパートで働き始めた頃に「ゆくゆくは正社員になってください」と打診されたが、「絶対にいやだ」と思っていた。しかし、夫は「正社員になれるなんてまたとないチャンスだ」と言って、再就職を勧めた。悩んだ末に引き受けた。
「お姉ちゃんが中学受験をすると、妹もやりたいというんですよね。上の子と学校見学に家族で出かけていました。私立の綺麗な校舎を見たら、妹だって、そっちに行きたくなりますよ。差をつけるわけにもいかないので姉と同じ大手塾に通わせています。正社員になると子供の勉強をちゃんと見てあげられないから、個別指導塾を使おうか悩んでいます」
下の子の学年はトラブルもないから、そのまま公立中学に進んでほしかったが、そうもいかなくなってしまった。長女の学年でいじめっ子が幅をきかせていたことから、“重課金コース”に入ってしまったのだ。学区の評判がよくても、学年によっていじめなどの問題は起きうる。
名門校でもトラブルは起きる
もちろん、それは公立小学校だけの問題ではない。名門私立小学校や国立附属でも、いじめなどのトラブルが発生すると、生徒たちが中学受験をして他の中学に進学をする。
ある都内の私立女子校の小学校でいじめが多く、被害者が中学受験をして共学に進学したがるというケースも聞く。その女子校は手厚くて面倒見がいいので知られる。いじめへの対応をしないわけがない。ただ、学校側がどんなに尽力してもいじめがなくならないのだろう。
なぜそうなるかというと、ひとつには閉鎖的な空間に少数の生徒がいると、人間関係が窮屈になり、いじめが発生しやすくなるからではないか。公立小学校も少子化でクラスの人数が少なく、学年全体がこぢんまりしているところも増えてきている。そうなるといじめが起きた時に逃げ場がない。