東京都が発表した「令和3年度 都内私立中学校の学費の状況」によると、入学金を含む初年度納付金を合わせた平均は97万176円。公立中学に高額に比べて思えるが、『中学受験 やってはいけない塾選び』などの著書があるライターの杉浦由美子氏によると、「教育費のコストパフォーマンスを考えて中学受験を選択する家庭が実は多い」という。中学受験と教育費(学校の学費や塾代)の関係について、杉浦氏が解説する。
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中学受験シーズンの本番を迎え、首都圏では埼玉や千葉を中心とする中学入試がはじまった。この1月入試で合格し、入学金を払っても、2月の本命校に受かれば、その入学金は無駄になってしまう。遠方からの受験ならホテル代や交通費、そして受験料に併願校の入学金。そして、塾の費用は3年間で250万円ほどかかるから総額で300万円ほどかかることも多い。外野からみると、中学受験の保護者は教育費に糸目をつけない人たちに思えるだろう。
しかしだ。中学受験生の保護者たちをインタビューしていると違う面もみえてくる。ちゃんと教育費に「糸目をつけよう」としているのだ。それでもその目論見が崩れてしまうのだ。
私が2022年の夏にインタビューしたママ・Aさんも、その一人である。自身は派遣社員で、メーカー勤務の夫と合わせて世帯収入800万円ほどだ。現在、私立の中高一貫校に通う高校生の息子がひとりいる。面倒見がいいと評判の学校だ。
彼女は、中学受験を選択した理由をこう話す。
「高校入試を対策するにも塾代はかかります。公立中学に進学した甥っ子は、中1から大手塾に通って、中2から通常授業、夏期講習、冬期講習、春期講習にも通いました。結局、国立大学附属高校に進学したのですが、中学3年間で約200万円の塾代がかかったようです。そして高校に入ってもまた塾通いです。それだけ塾代をかけて高校受験させるならば、中学から中高一貫校に入れた方が得なんじゃないかと思ったんです」
実は中学受験を検討する保護者の多くが同じことを考えている。大半の中高一貫校の学費は年間60万円から70万円。入学金を入れると中学3年間で200万円強になる。高校受験対策の塾代と大きくは変わらない。
中高一貫校のメリットは、5年間で高3までのカリキュラムを終えて、高3の1年間を大学受験対策の演習に当てられる点だ。高校入試を避けた方が、大学受験対策を効率よくできる。しかも私立中高一貫校の多くは面倒見のよさを売りにしている。公式サイトをみると多くの学校で「当校で大学合格まで学習面は全部面倒をみるから、塾に通う必要はない」という旨を明記している。
6年間、塾なしで過ごせるならば、年間70万円の学費もコスパは良いようにみえるわけである。