時間給で働いている人が、たとえ短時間でも“拘束されているのに給与が発生しない時間”があると、どう感じるだろうか。こういった無給の拘束時間は、合法なのか? 弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
娘は派遣社員としてテレフォンオペレーターの仕事をしています。毎朝、電話対応の10分前にはスタンバイしているそうですが、その時間は時給に反映されていません。上司に質問したところ、「朝のスタンバイは時給に含まれないルールだ」と言われたそうです。残業分はきちんともらえるのに、朝の待機時間の時給がもらえないのには納得いきません。労働基準法の違反にはならないのでしょうか。(東京都・58才・主婦)
【回答】
労働時間とは、労働者が使用者の指揮監督下にある時間のことです。使用者の指揮監督下にあれば、実際の労働をしていなくても、例えば、すぐ作業できるよう待機を命じられている、いわゆる「手待ち時間」は労働時間に含まれます。
ですから、娘さんのスタンバイの10分間が使用者の指揮監督下にある場合には労働時間といえます。スタンバイしている時間が所定の労働時間に含まれていなければ、時間外労働として残業代の対象になります。
職場の始業時刻と終業時刻は労働契約で定められ、多くは終業時間後の残業が問題になりますが、始業時間前の労働が「早出残業」として時間外労働になることも稀ではありません。もっとも、始業時間に遅刻しないように早めに出社してもそれは社会人の常識的な行為であって、それだけで労働時間になるものではありません。
早出を命じられ、遅れると遅刻として、減給などの不利益処分が科される場合には時間外労働になります。しかし作業服の着替えなどは、労働に必要な準備行為といえますが、労務提供行為ではありませんし、自分でできることで、使用者の監督下で行われることでもないので労働時間ではないと解されます。