再度の値上げを回避するための施策か
3種類の牛焼肉定食を実食した記者Aは、90円というトッピングの価格について、どう感じたのか。
「これまで標準でついていた大根おろしも、リニューアル後の『鬼おろし牛焼肉定食』ではボリュームも増えていますし、トッピングでの有料化には納得できます。ただ、やはりプラス90円というのは高く感じますね。私の場合、90円を払うのであれば、『鬼おろし』ではなく、『のりキム』か『ネギダレ』に払いたいです。『鬼おろし』だと、どうしても“もともとタダだった”という記憶があるので……。
また『のりキム』についても、サイドメニューの『富士山キムチ』が100円で販売されているので、そちらを選びたくなってしまいます。そう考えると、個人的なNo.1薬味は『ネギダレ』です。牛焼肉のおいしさの可能性を広げているという印象もありますし、あのオイリーな感じはパンチが効いていて、インパクトも強い。こってりとしたものを食べたいときなどにも適していると思いますし、これくらい個性があるなら90円をプラスしてももったいなくはないと思いました」
今回の『牛焼肉定食』のリニューアルについて、外食チェーンに詳しいライターの小浦大生氏はこう分析する。
「昨今の原材料費や物流費の高騰の中で、松屋も値上げをしなければ利益を出しにくいのは間違いないでしょう。しかし、牛焼肉定食は昨年5月に650円から690円に値上げされており、これ以上値上げしにくい状況もある。そんな中での苦肉の策が“リニューアル”という形だったのだと思います。
そもそも、松屋ではすでにサイドメニューで『鬼おろし』(150円)、『青ネギ』(130円)、『富士山キムチ』(100円)、『ネギダレ』(180円)というものがあり、それらを『牛焼肉定食』バージョンにしたものが、今回新たに登場した90円の“薬味”ということになります。つまり、すでにあるメニューをアレンジすることで、単純な値上げを回避したというわけです。
標準の『牛焼肉定食』から大根おろしと青ネギがなくなってしまったのは、たしかに残念です。しかし、一方で既存のサイドメニューよりも安い価格で薬味をトッピングできるようになったのは、選択肢の幅が広がったと考えることもできます。今後“薬味”の種類が増えていくという展開があれば、“プラス90円”のアゲインストを乗り越えて、消費者の満足度を高めていくこともできるかもしれません」
実質的な値上げを避けられない状況の中で、いかに消費者の満足度を高めて、納得させていくのか──飲食チェーンは、そうした課題と向き合っていかなければならない状況にある。(了)